■”3分の2”、もう一つの罠
梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。
参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。
梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にします。その理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。
参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。
梅村さん
組織率二割しかないですのにね。
参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。
梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。
参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。
梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。
参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。
樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)
梅村さん
僕らが共通認識で持っておかないといけないのは、あの大戦で亡くなった人の3分の1か半分か、データを忘れたのですが、餓死なんですよね。戦争で弾が当たって、それも悲しい事実なんだけど、南方や大陸で餓死で亡くなっているんです。国によって補給路を断たれているわけです。そこにお前ら行ってこいと言われた、そういう感覚を持っておられるんです。僕の伯父が去年亡くなったんですが、志願して19歳で満州に行って、引き揚げできた人です。軍の中で彼一人しか車を運転できなかったから、トラックを運転していました。港に帰ってきた時は2台爆弾で殺されて、彼一人だけ帰ってきて、後から行った人はみんな亡くなっている。自分から志願した人は”良い”戦地に行けるけど、後の人は”悪い”戦地。どうやって同級生が戦地に連れて行かれていったのか聞くと、先に戦争に行った子のお母さんたちが「五人組」をつくります。そして行ってない家に押し掛けて「うちの子は行きましたよ。お宅はまだ行ってないんですね」と言うんです。日本人ですから、それではうちも出さないと悪いと言って、6人目が出ていく、そういうことが国家としてあったわけです。
だから9条に指一本触れてはいけないわけではないけど、そういう事実も知った上で、この議論をしないといけません。安倍さんにしても自民党の若手議員にしても「竹島がやばいから」と言いますが。我々日本国民は流されやすいし、テレビでそう言われたら弱いから、慎重にならないといけない国だと思います。
「赤紙」ってあるでしょう。日本に何枚ぐらい残っていると思いますか? あんなに何十万枚、何百枚と配られた、それがなんと15枚しか残ってないんです。それも昭和館とか戦争の記念館とか。全部国が回収したんです。だから絶対表に出ない。唯一残っているのが東京の九段にあります。どこの家でも残ってそうでしょう? だからこれは、「狂気」なんです。
参加者
配って、回収するんですか?
梅村さん
回収するんです。絶対外に見られないように。だから今日本に十何枚しか残っていない。それぐらい国家は統制したわけです。「赤紙というものがある」という噂になっていたわけです。
参加者
15枚は何で残っていたんですか?
梅村さん
たまたま誰かが渡し忘れていたとか、回収し忘れていたとか。
参加者
すぐ燃やしていたとか、ですか?
梅村さん
表に出ないように全部処分していたということ、ですね。
参加者
それが、権力だということですか。
梅村さん
そうですね。それぐらい権力というのは徹底していただろうと思います。凄いことですよね。僕も議員になってからこういうことを知ったんです。医者やっている時はこんなことは知りません。たまたまこの世界に来て、右翼的な高齢者の議員さんと話すこともあるし、石原慎太郎さんたちと意見交換することもあるし。いろんな意見を聞くわけです。その中で自分のスタンスを決めていきます。憲法学者に聞くと、「今の自衛隊は憲法違反だ」という意見が多数みられます。軍備力を持たないと書いてあるわけですから、あれは軍備力だと。だけど当時は警察予備隊の想定だったから、今の自衛隊のような形は想定していないです。それを今の改憲派は突いてきて、「憲法学者も言ってる、今の自衛隊は違憲だと言っているから、僕らは集団的自衛権まで入れて国防軍をするんだ」と。話が3階4階に上がって行ってしまっています。だから今の自衛隊は、個別的自衛権については憲法上認めていますということを書いた方がいいんじゃないかという説を僕は取っています。それが”ゼロか100か”になって、今は”100”になって持って行かれようとしています。だから現状の自衛隊については日本で認める唯一の自衛権ですと書いた方が歯止めがかかるんじゃないかというのが僕の意見です。だけどできる限り変えない方がいいと言う方もいる。どっちの意見も見方の違いです。