梅ちゃん先生のティールーム第1回~宋美玄・産婦人科医⑤「ガスケアプローチを広げたい」

宋:話は変わるけど、舛添さんは梅村君のことを評価していたよ。

 

梅村:どこで会うたの?

 

宋:私、去年の参院選前に政治の話をするテレビ番組に出たんだけど、その時に舛添さんと雑談をしてて。「ドクターからは舛添さんが厚生労働大臣の時のこと、評価されていますよ」とか話してた時に、何かの話題でそうなった。「彼はすごくやってるよね」みたいなこと言っていた。

 

梅村:それはそれは、有り難いです。あの頃は都知事になられるとは思わへんかったからね。

 

宋:その時、舛添さんがちょうど政界を引退されるというような話が出ていて、「ぜひまた出てきてください」と話したわ。

梅村:そうですか。また会うことがあったらよろしくと言っといてください(笑)。ところで宋さんはこれからどんなことやりたいと思ってるの?

 

司会:皆さん、宋先生がこれから何をやっていかれるのかは興味津々だと思います。

 

宋:実はちょっといいものを発見してん。フランスの先生がやっている「ガスケアプローチ」というものなんだけど、正しい姿勢や呼吸法によって、身体能力を最大限に活かし、骨盤底筋や体へのダメージを最小限にする出産法や産後ケアがあるの。もちろん必要な人には帝王切開や会陰切開もする。分娩台の上でもできるしね。

 

梅村:それはどんなふうにいいの?

 

宋:日本の産科医療従事者の多くは出産の時に内診で赤ちゃんの向きや頭の下がり具合を診察はするけれど、基本的には骨盤の中をブラックボックスみたいに思っている。出産する時に骨盤の関節や、この部分の筋肉がどう動いているのかとか、全体的にどう体の骨や筋肉、そして赤ちゃんが動いて出産になるのか、そういう体の仕組みのようなことにまで興味を持たない。一方で単に医療介入を悪とみなして排除する「自然出産」を支持する人たちもいるので、そういう人たちと話し合うのに良いアプローチだと思う。

 

司会:全体的な体の機能に着目したアプローチなんですね。

 

宋:大切なのは医療が手を出すかどうかじゃないんよね。自分自身の身体能力を最大に生かすことができればいいお産になり、自分の身体へのダメージも少ない。ガスケアプローチでは必要な医療は使うし、特別な思想や親和性もないというのでいいなと思って。習うためにパリに通って、そこから日本支部を作ることを許されてん。助産師や医師の仲間と一緒に社団法人を立ち上げることになって、代表として旗を振ることになったよ。

 

梅村:とにかく医療を排除する「自然出産」って?

 

宋:色んなのがマスコミに取り上げられてブームになってるんよ。多くが今の医療に否定的で、畳の上で生みたいとか、離島や洞窟の中で生みたいとか。医学的に安全かどうか分からない出産方法でリスクがあるのに、それを望む人たちがいる。

 

梅村:そういうのがあるのね。また僕らの知らん世界があるんや。

 

宋:それでも大多数は生まれるし、子どもは元気に育つからね。

 

梅村:そうするとそれが広まるわけよね。「私はこれで理想的なお産ができました」という感じで。

 

司会:そういう経験談がブログとかインターネットでどんどん普及して、信じてしまう人も多くいますから。

 

宋:このガスケアプローチなら、産科医や助産師で反対する人は多分あまりいないと思う。助産師とかとどんどんネットワークを増やしていって、正しい知識を持ってもらえるように普及啓発していこうと思ってる。

 

梅村:そういうのを今やろうとしているんや。

 

宋:そうやって助産師のネットワークとかができたら、正しい性教育とかも広まっていくしね。医者の言うことって正論だから「血が通ってない」と思われるみたいで、メッセージの届かない層がある。そこには助産師の意見だったら聞くという人もいるんだよね。もともと医師と助産師はパートナーだから、本当に話の分かる助産師とどんどん組んでやっていきたい。これは医者だけでは無理やからね。そう思って今動いてるよ。

 

(つづく)