梅ちゃん先生のティールーム第2回~井上清成・弁護士①警視庁管内で公安担当だった父の影響で弁護士に

右から梅村聡氏、井上清成氏、熊田
右から梅村聡氏、井上清成氏、熊田

梅村:井上先生、こんにちは。先生とはいろんなところでしょっちゅうお会いさせて頂いているんですけども、今日はよろしくお願いいたします。

 

井上:こちらこそ、よろしくお願いします。

 

梅村:この対談の2回目を先生にお願いしたのは、もともと僕が医療の世界から政治に出てくるきっかけが福島県立大野病院事件(※)だったんです。政治家の方と出会ってこの事件について意見交換をしているうちに、選挙に出るように勧められたという経緯がありました。

(※)福島県立大野病院事件…2004年に福島県立大野病院で妊婦が帝王切開手術中に死亡した事件。執刀医は業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕、起訴され、08年に無罪となった。

 

井上:ええ。

 

梅村:議員になって井上先生とどこかの講演会でご一緒して、その後、事故調や出産育児一時金などの話で親しくさせていただきました。そういう意味では私の政治家としての原点の部分に関わる先生ですので、ぜひ対談相手をお願いさせて頂きたいということで参りました。

 

井上:ご指名いただいてありがとうございます。

 

熊田:井上先生は普段、司法に関わる色々なテーマについて講演や取材等でお話をされていると思います。今回のこのコーナーでは、「井上先生ってこんな人だったの?」とか、普段気になっていても聞けないような話とか、そんな面白トークをして頂けたらと思っています。

 

井上:分かりました(笑)。

 

■「弁護士よりも医者がよかった」梅村

梅村:僕のことから話しますとね、僕は高校生の2年生から3年生に上がるときに、文系か理系か選ばなあかんかったんです。その時に適性検査というものを受けましてね、今から考えたら単純なマークシートのものなんですけど。すると医者の仕事は適性の二番か三番だったんですよ。一番は弁護士やったんです。先生からどちらでも好きな道を選べと言われて、僕は「医者にします」って言ったんですよ。医者は基本的に患者さんを治すからみんなに「ありがとうございます」と言ってもらえると。弁護士さんは戦うから、絶対半分には恨まれると(笑)。当時高校生なりに、弁護士は悪いやつの味方をする仕事やみたいに思ってたわけですよ。人権の話とかは別にしてね。それなら誰にでも感謝される医者の方が自分は心地いいんじゃないかと。入り口は、意外と単純なところだったんです。

 

井上:それは正しいですな(笑)。

 

熊田:分かりやすくていいですね(笑)。

 

梅村:井上先生はどういう経緯で法律の道へ?

 

井上:法律の道に入ったのは本当に単純です。私の父親は警察官で、それもたたき上げの警察官だったわけですよ。昇進していくために署内で昇進試験を受けなきゃいけない。この昇進試験はいわゆる机上のお勉強で、父はそれに強かったんですよ。でも手先が器用ではなかったから、息子の私も医者ではないんだろうなと。だから小っちゃい頃からうちに法律の本があるわけですよ。小っちゃい時って、分かりもしないくせに本棚から親の本を引っ張り出して見たりする。例えば憲法か何かの本を引っ張り出してくるわけですよ。今自衛権で問題になっている憲法9条がどうのこうのとか、そういうことが分厚く書いてあるわけです。一生懸命読んで、親に質問をするんですけど、親もよう答えんわけですね。そういうようなことで、家の中に法律の本があったというところから。

 

梅村:なるほど。

 

■「警察官ってこういうもんなんだ」井上

井上:ところが父親が昇進していきますでしょ。そうするとへべれけに酔って帰ってくるわけですよ。地位が上がってきた警察官だから、誰に飲ませてもらったかはおのずから分かるでしょう。それで「警察ってこういうもんなんだな」と思ってるわけですね。盆暮れの付け届けも山のようにあるんですよ。

 

梅村:当時ですからね。

 

井上:40年、50年近くも昔の話ですけどね。そんな環境で育ってくると、ちょうど反抗期にも当たって、どう見ても「いい親」とは言えんように思うわけですよ。「こういうやつってけしからんのじゃないか」と。でも結局、親の影響なんです。親族に法律の系統の人なんか誰もいなくて、父方も母方も親戚一同みんな農家みたいなものです。ただ父親一人だけたまたま警察官になってしまって、そしたらそういう机上のお勉強ができた。ただ学歴はないから、いわゆるキャリアじゃないわけです。完全なたたき上げのノンキャリアで、苦労しながらやってたというのはそこそこ分かるわけですよ。だから法律の世界に入った理由は、家の影響です。たまたま親の影響で法律があった、ただそれが警察官だったという。

 

梅村:警察の中でもどんなお仕事をされてたんでしょう?

 

井上:いわゆる公安です。お分かりだと思いますが、当時の公安というと思想警察ですよね。そういうものの取り締まりばかりやってるような類いです。本来秘密なんでしょうけど、こうやって手紙を検閲するとかこうやってスパイを放つとか、小さい頃に多少、権力の乱用の仕方の英才教育を受けていたと・・・(笑)。

 

つづく