熊田梨恵の独り言2

代表・熊田梨恵の個人ブログです。

 

2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

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■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

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2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

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2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

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2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
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2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

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2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

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2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

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2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

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2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

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2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

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2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

     ■             ■             ■            ■

 

 

 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

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2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

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2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

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■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

左から増本幸志氏(埼玉東部消防組合消防局)、白髪宏司氏(済生会栗橋病院)、金子裕貴医師(同)
左から増本幸志氏(埼玉東部消防組合消防局)、白髪宏司氏(済生会栗橋病院)、金子裕貴医師(同)

■「対策なく家庭に返された被虐待児の5%は死亡、25%は重症」金子医師 

 

次にこの男子児童を診察した金子医師が発表。以下はその要約。

 

・全身を観察すると男子児童の顎に痣があり、背中に成人の手のひらによると思われる平手打ちの痕があった。

・尿を検査すると、2種類の薬物を検出。内科医の診察により、父親の常用している向精神薬を誤飲したことによる薬物中毒による意識障害と診断。そのまま入院。

・両親に話を聞くと「本人のベッドの中に向精神薬が1錠あっただけでからのケースも落ちていなかったので、服用した量や種類も分からない」。

・両親ともに無職、生活保護家庭。ネグレクトが疑われた。両親ともに昼夜逆転の生活。母は家事を一切しない。子どもらは普段から満足に食事を与えられていない様子で、男子児童は学校でも朝からお菓子を食べていたりした。母は病院に面会に来ず、父は来院の約束を守らない。

・男子児童は「背中は父に叩かれた、顔は分からない」。父に叩かれたのはこれで2度目と話した。父親は「アイスを勝手に食べたことに怒って背中を叩いた。翌日になっても起きないため、顔を叩いて起こそうとした」。

・薬物中毒と虐待を疑い、児相への連絡の是非も含めて保健センターへ連絡。

・児相職員と警察(少年課)と男子児童が面談。男子児童は怪我について「全く覚えていない」と入院直後と違う発言。警察は男子児童を児相に連れていきたいと考えたが、本人が強く拒否したため自宅退院の方針となった。

・児相と警察ともに既に関わっている家族であり対応は迅速だった。ただ、お互いにけん制し合っている印象があり、情報共有が不十分。連携不足を感じた。

・病院が間に入っていなかったら上手く連携をとれていたのだろうか? と思う。

 

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 金子医師は虐待について解説し、養育者に加害の意図のあるなしに関わらず「不適切な養育」によって身体的精神的症状が生じる「マルトリートメント症候群」に注意すべきとし、「マスコミ報道に取り上げられるような悲惨な虐待死亡事件だけが虐待ではない。子どもが不適切な環境で育つことが虐待」と主張。「被虐待児を何の対策も打たずに再び家庭に返してしまった場合、5%は死亡、25%は再受傷し重症となる」と児童虐待に関する論文の情報を述べ、「重症度に関わらず、警察と児相に通告してほしい」と訴えた。

 

医療機関からの虐待の通報チャート

一般医療機関における子ども虐待初期対応ガイド
一般医療機関における子ども虐待初期対応ガイド(日本子ども虐待医学研究会HPより)

 県内の児童相談所の職員も発言。児童虐待の現状や普段の業務内容、通告時のポイントなどを話し、年々虐待は増えているにも関わらず人手が足りず対応し切れていない現状についても訴えた。児相の職員は、「通告をためらわないでほしい。間違っていても責任を問われない。通告が支援の始まりと思ってもらえたら。児相だけではできないことがあるので、よろしくお願いしたい」と話した。

 

 保健センターの職員からは「虐待の”常連”の方の情報を消防の方に少し上げるのも大事かと思う。ある程度情報が行っていれば連携してうまく共有して医師にも伝えられるかと思う」という意見があった。

2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

調剤室内の様子
調剤室内の様子

 大上さんは「大きい病院では待ち時間が苦痛です。その上薬局でも待たされたら、かなりの苦痛になります。その待ち時間の質を上げるのが薬局の役目ではないかと思いました。どう待つか、が大事だと思います。全く初めてのことなので、まずはやってみようということで、あまり混雑しない土曜日にしました」

 薬剤師2年目の谷岡沙良さんは、「患者さんが測定しておられる間に調剤できるので、調剤側のタイムプレッシャーがなくて済みます。患者さんも喜んでおられるし、私たちも落ち着いて調剤できるのでよかったです」と話します。混雑時は調剤する薬剤師側にも焦りが出るため、その解消にも役立ちそうとのこと。
 
 薬局事務を17年務める長谷川恵さんは、この薬局が処方を多く受ける病院は比較的待ち時間が長く、苦痛を感じている患者への接し方に悩んでいたと話します。「中にはほぼ一日がかりで受診される方もおられます。その上薬でも待たされて、怒ってしまう方もおられました。私たちから世間話をしたり、声をかけることも考えますが、話をして和む方ばかりでもありませんし、かえってイライラされる方もおられるので、難しいところでした。今日は思った以上に多くの方が測定に応えてくださいました。こういうのがあって話すと話しやすく、全然違います」。長谷川さんの悩みにも、全く別の話題を持ち込むことが奏功したようです。

 14時までに処方箋を持ってきたのは38人。「血管年齢」を測ったのは34人。「脳年齢」は25人。患者は20代から70代までと様々でした。

 測定を受けた大阪市内に住む60代の男性は「いつもは待っているだけなので、こういうのがあるといいと思います。ただ、その結果に対してどうしたらいいかという対策も教えてもらいたかったです」と話しました。

 大上さんは「予想していたより多くの方に測定していただけて、喜んで帰って行かれる方が多くてよかったです。こうやってこの薬局の存在感を出していければと思います」と話しました。

測定の説明をする扇町カイセイ薬局の楠見朋子薬局長(左)
測定の説明をする扇町カイセイ薬局の楠見朋子薬局長(左)

 実はこの1週間前の11月9日、別の用事があって、偶然にも別店舗の扇町カイセイ薬局さんの前を通り掛かったのです。店舗の前でスタッフさんが呼び込みをしていたので、「これはもしかして」と思って声をかけると、大当たり! こちらの店舗でも「血管年齢」と「脳年齢」の測定イベントをしていたのでした。

 こちらも10時から14時に実施。私が訪問したのは13時頃でしたが、その時点で20人が測定に訪れていました。周囲の門前薬局との差別化を打ち出していた天満店とは少し趣が違い、地域密着型の薬局のイメージを前面に出していたように感じられました。2週間前から店舗前に黒板を置き、近隣の住民や、サラリーマンなどにイベント実施を宣伝していたそうです。その甲斐あってか、当日は近隣のダンススクールに通う20代の若者から80代の高齢者までが来店。イベント宣伝のポスターを貼ってもらっていた近隣の居酒屋の店長も訪れていました。

 薬局長の楠見朋子さんは、「患者さんと薬じゃないところで繋がれて、楽しいです。皆さん健康のことを気にしていることもよく分かったし、薬とは違うアプローチでできて嬉しいです。薬とは関係なく、こうして来店してもらえることはいいなと思いました」と、笑顔で話しました。

2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

 そして翌朝2時まで続いた3次会。そんな時間までお付き合いくださった皆様方、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でございました。

 

  今回の参加者は医師の方が多かったですが、医学生、海外経験の長い看護師、薬剤師、医療系市民団体の代表の方々などなど、様々なフィールドを持つ方がたくさん集まってく ださいました! 皆様、北海道や秋田、新潟、京都、高知、熊本などなど…、遠路、連休初日の夜にお集まりくださって、感謝の思いに堪えません。改めて、私は多くの方々に支えられて活動できているのだと、実感できました。

 

 やはりコンパクトな会場にしてよかったです。皆さんのお顔が見られるので、距離は近い方がいいですね。

 

 多くの方々に支えてもらっている自分を感じながら、これからどう進んでいくべきかと考えさせられた、大切な大切な時間でした。

 

 皆様、いつも本当に、ありがとうございます。

 

2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
教職員や救急救命士、一般市民など約60人が参加
教職員や救急救命士、一般市民など約60人が参加

■「大事なのは発症後のサポート体制」

 

 白髪氏は調布の事故後に、「おかわり禁止」という方法で事故防止対策をする学校が増えていると述べ、子どもの行動や食べたいものを制限する方法に難色を示した。アレルギーの子どもの皿の色を変えるという防止策についても、周囲と違う対応が子どもの間で差別を生むこともあると、疑問を呈した。

「そういうやり方で本当にいいのか。私は違うと思う」と述べ、様々な場面で誤食は起こり得るとして、起こった場合のサポート体制を学校や消防、医療側で整えておくことが大事だと訴えた。

 

  小児科の金子裕貴医師は、地域の連携の在り方として、管轄する消防機関がアレルギーを持つ子どもを把握するために、学校と情報共有しておくことが大切と強調。消防側が子どもの学校や住まいを把握していれば、あらかじめ搬送先などを考えておけるとした。実際にアナフィラキシーが起こった場合のシミュレーションを学校内で行い、担任や養護教諭など、エピペンを打つ人と優先順位を決めておくべきとした。

 

■エピペンはいつ、どんな症状の時?

 金子氏はエピペンを使うタイミングについて、日本小児アレルギー学会が示した状態(下図)が一つでもあればすぐにエピペンを使うべきとした。

 

(学会HPより)
(学会HPより)

 

 白髪氏は「エピペンについて勉強して理解していても、実際に打てるかどうかは違う」と述べ、実際にエピペン投与が必要な場面になっても、「注射」という慣れない行為に躊躇して打てない人が多いことを指摘。「その子が危険な状態に陥いったことがあり、今後もそうなる可能性があるから医師は処方している。エピペンを早く打ち過ぎて悪くなることはない。どうしようかと迷ったら、悩まずに打ってほしい」と強調。打たなかったり、打つタイミングが遅くなると、調布の事故のように死亡する可能性があるとした。

 

 講義後、参加者はエピペンの練習器具を使って太腿などに打つ練習をした。白髪医師は「『むにゅっ』と打つのではなく『ガツン』という感じです」と、ペン先部分を押し付けるのではなく、勢いよく強く打つよう呼びかけた。

 

地域の母親と子どもも参加
地域の母親と子どもも参加

■「打っても亡くならないけど、打たなかったら亡くなる」

  意見交換で食物アレルギーを持つ子どもの母親は、エピペンを使うことにためらってしまう気持ちを涙ながらに吐露した。「今日の話を聞いて、『打って亡くなる』ことはないけど、 『打たなかったら亡くなる』ことはあるんだと自分で思えた。エピペンは一瞬痛いのかもしれないけど、それで命が助かるのだと分かった。何かあった時のために、家で練習しておくのが一番だと思う。今は幼稚園の先生たちもアレルギーの子どもが多くて気を張って大変で、申し訳ないという気持ちがある。打って助かるなら、先生たちには子どもが嫌がっても打ってほしいと思う。そこで何があったからと言って、先生たちを責めるというのではない。こういうことを小中学校の先生にも知ってもらいたいし、一度エピペンを握っていたら違うと思うから参加してもらいたい。私たちからどうやったら働きかけられるのか、市役所にでも行ったらいいのだろうか。先生たちの負担は増えるけど、日中子どもと一緒にいる母の私も勉強して、精神的に強くならなければいけないと思う」

 

 この発言を受けて白髪医師は、「打てないお母さんが多いことを学んだ」と述べ、母親がエピペンを打たなければいけない時には、周囲の医療者や教職員などがサポートして打てるようにする体制を整えることが大事だと話した。

 

 参加した母親からの「子どもが初めてアレルギー発作を起こした場合はどうしたらいいのか」という質問に対し、金子氏は「アナフィラキシーは見てすぐに『ま ずい』と分かるので、速やかに救急車を呼ぶか、近くに病院があれば駆け込んでほしい」と答えた。その間は、子どもの体を寝かせた状態で脚を上げておく体位を取ってもらいたいとした。

 

 講座終了後、栗橋南小学校の金子孝雄校長は、「昨年、児童のアレルギー発作に対応したことがあり、林間学校などもあるので、担任としても不安があった。教育委員会からも専門の機関から話を聞くようにと言われ、研修を考えていたところだったので、このような会はありがたかった。今回の講義を聞いて、エピペンを打って命を救えるなら迷わず使用しようと思った。こういう機会があったらまた受けたい」と話した。

 

 白髪氏は、「お母さんが泣きながら訴えてくれた内容が、とても大事だと思った。あんなにも怖いと思っているということを、他の人たちはなかなか分からないと思う。食物アレルギーの問題が、当事者や家族の問題にされてしまっていることで、家族の負担が大 きくなっている。調布で亡くなったお子さんの命を無駄にしてはいけない。こうして現場からやっていくことで解決できることがある。今日の話を基に、学校と消防も連携 していってもらえたら」と話した。

 

2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」Amazon紹介ページ

2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

パーソナリティの山村武大さんと
パーソナリティの山村武大さんと

 私の中では、いまだに彼女への思いが消化されていないのだと思います。もっと何かできたんじゃないのか。私にもっと力があったら、彼女を止められたんじゃないのか、もっと私が大人だったら、彼女はそうする前に、私に何か一言発してくれたんじゃないのか。私がもっともっと大きい人間だったら、彼女を助けられたんじゃないのか。彼女が笑って生きられるように、助けられたんじゃないのか・・・!

 

 今でも、そんなことばかり考えています。きっとそれが、私の原動力なのでしょう。今さら、彼女を助けるなんてことはできないけれど、もし彼女がこの社会にもう一度生まれ変わって生きてくれた時、少しはいい社会になっていたらと思うのです。自分から死ぬことを選ばなくてもいい社会にしたい。「生きていることは楽しいと、素晴らしい」と心から思えるような、そんな社会にしたいのです。

 

 もう叶わないけれど、もう一度、彼女のあの笑顔を見たい。それが私の、記者を続ける理由です。

2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

■個人的備忘録

 

・搬送時間短縮についての問題点

→処置してから運ぶか、とにかく急いで搬送するか。処置したら、確実に搬送時間がかかる。

 

・救命士議論のトレンド

①職域拡大

→全国の救急救命士約4万人。うち2万人が自治体消防の救命士。5000人は病院など他の場。15000人が資格を活用していない。しかし今後も数は増えるが、どうする?

②高度化

→処置範囲拡大の議論。どこまでやるんだ。業務拡大の一方で、個別に習得する知識と技術が増えることで、他がおろそかになる懸念。訴訟リスクも抱えることになる。

③再教育

→何度か改正されているのだが。座学が多い。内容古い。研修に行く時間がない。救命士が救命士を教育できるように。基本的な手技・技術・知識の充実を。

 

・トリアージ

119番通報時、現場、院内。それぞれの場で。

 

・メディカルコントロール協議会

消防法改正の中で、搬送受け入れルールをつくる組織として想定されているが、はっきりと法的に位置づけられているわけではないため、弱い。地域によりアクティビティーに差がある。

 

・訴訟リスク

不搬送の場合の対応。

 

 

 

 

2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

動画⑤ 政治家の“口利き”、その内実と効能について

参加者 

国会の中に入れるんですか?

 

梅村さん 

入れますよ。僕は、予算委員会の傍聴をお勧めします。静かにしておかないといけませんが。

 

参加者 

会議中に寝てる議員がいたら、警備員につまみ出されることを覚悟で怒鳴ってもいいですか?

 

梅村さん 

それよりも、怒られること覚悟ですが、ツイッターやフェイスブックで「〇〇議員、爆睡なう」と中継する方が、その議員には効くかもしれません。国会議員に緊張感がないということが、問題ですから。

 

参加者 

舐められていると思います。国民の投票率が低いことをいい気になって、国会議員が好き勝手にしていないか、というのが本音です。

 

■国内最大の既得権益

梅村さん 

今、日本で一番既得権益を持っているのは国会議員です。今の国会議員は一度党の候補者になったら、不祥事を起こすか、定年を超えて活動できなくなるか、落選を繰り返してアウトと言われない限りはその党の候補者であり続けます。だからものすごく美味しい話です。落ちても党から活動費がもらえるわけですから、国民の投票率が低い方が身内の票で勝てるというわけです。投票率100%になったら、お尻に火がついて、みんな大騒ぎします。

 

動画⑥ 若い世代の政治意識について/梅村議員からの提案 ~国会に足を運んでみませんか~

参加者 

議員さんはクローズドな社会にいるんじゃないかなと思います。市民代表と言いながら、市民のことを知らない人たちがやっていて、代表の意味ないやん、全然分かってないやんと思います。

 

梅村さん 

僕が当選した時の選挙で、ある資料に「民主党は逆風だから、浮動票を狙わずに固定票を固めよう」と書いてあって、怒ったことがあります。逆風の時こそ、身内で固めるのではなく、浮動票に訴えないと。関心のない人のところに行って「うちピンチなんだけど、関心あったら来ませんか」と新規顧客を呼ばないといけません。新規顧客を呼べないような店は、常連が去ったら終わりなんです。でも今の国会議員は浮動票を恐れています。そこにチャレンジできるようにならないといけないと思います。

 

動画⑦ 女性が本当の意味で活躍する社会にするために/「政治家は、“珍獣”じゃない!

■若者の問題は「疎外感」

参加者

投票率が低いという話がで、20代は30%ぐらいだと聞きます。原因の一つに、人口の多い高齢者向けの政策をするから、というのがあると思います。20~30代の投票率を上げる努力として、何をされているんですか?

 

梅村さん

関心のある学生たちを集めて、「学生隊」をつくろうと思っています。今の20代は、僕らが想像しているよりはるかに政治に興味があります。しかし彼らは、疎外感を持っています。既得権やお金が自分たちのところに回ってこないとか、そういうことではありません。関心を持ってもらえない、ということに疎外感があるのです。新入社員が頑張って仕事をしても、年が若いから認めてもらえなくてつらいというような感じです。だから「あなたたちに関心を持っているよ」と伝えるだけで、全然違うのです。実利がどうこうと言う前に、まずそのメッセージがないのが問題なのです。

 

動画⑧ “政治参加”してみませんか?~小さなアクションが政治を動かすこともある

動画⑨ メディア・政治への関心・歳費の遣い方…ラスト15分、梅村代議士に質問を投げかけてみました

 

■            ■            ■            ■

 

 この後、女性の管理職登用問題などの話題も上がりました。

 

 国会議員と市民のざっくばらんなトークに、ご参加の方々からはご満足を頂けた様子で、ありがたく思っています。

 

 主催メンバーとの反省会では、「またやりたいけど、同じことを繰り返しては意味がない。今回の会は、僕らは面白かったかもしれないけど、国会議員の彼らにとっては票にもつながらないと思うし、ほぼメリットはなかった。だから、次回からは、僕らが何かを彼らに提供するような内容にするとか、彼らの政策のネタになったり、相互交流してウィンウィンの関係にできるような内容にしたい」というような意見が出ました。

 

 そうなんですよね。こちらからも何かシーズを提供できる市民でありたい。それが「政治家を育てる」ことに関わる第一歩なのかもしれません。

 

 次回はまた何をやろうかなと、思案中です。一緒にやってみたいという方がいらしたら、ぜひご連絡くださいませ!!

 

 

(おわり)

 

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

 

参加者の一言メッセージ
参加者の一言メッセージ

2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

■自民党による『憲法改正草案』の内容について&その背景についての対話


■献金、どう考える?

参加者
医師会には政治連盟があって、政治家に献金しています。薬剤師会にも薬剤師連盟があって、資金提供ということである政治家に億単位のお金が流れたりしています。献金を受けた政治家は、政治をフェアに行えるのかな? と思います。薬剤師会は「ロビー活動だから必要だ」と言いますが、それだと薬剤師のためであって、高齢者や一般の人のためではないと思うのですが。

梅村さん
ロビー活動は、一般の方に役立つものもあれば、そうでないものもあります。薬剤師会からは、「薬のネット販売をやめてほしい」という陳情があります。理由は、「ネットで全部買えるようになったら、薬剤師がいらなくなる」です。薬剤師会はそこまでしか意識していません。でも、他の立場からの反対理由も考えられます。「ネットで全部買えるようになったら、売り上げが落ちて、地方の薬局がつぶれる。市民にとって、ネットが使えない時に、薬局がないのは不便」とか。同じ「反対」であっても、薬剤師の立場から、市民の立場から、両方の面があります。そこをどう切り分けるかが政治側の仕事です。しかし、どちらかの意見しか聞かない議員が出てきているというところに問題があります。
薬のネット販売の話は、薬剤師会側とネット産業側の、利権対利権の闘いになっているわけですよね。今までは、献金の額の違いでどちらかにつく、という議員があまりに多かった。悲しいところです。献金をもらっていても、物を言える国会議員が理想的ですけどね。今までは有権者もそういうところには目が行かなくて、選挙ポスターを見て、「この人は爽やかだな」と言って投票したりして いたこともあったと思います。だけど、今後はそういう政治家を選んでいけるようになることが、必要だと思いますね。

 (つづく

 

■憲法96条“改正”について、“権力”の本質について~赤紙のエピソード

2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

梅村さん
僕らが共通認識で持っておかないといけないのは、あの大戦で亡くなった人の3分の1か半分か、データを忘れたのですが、餓死なんですよね。戦争で弾が当たって、それも悲しい事実なんだけど、南方や大陸で餓死で亡くなっているんです。国によって補給路を断たれているわけです。そこにお前ら行ってこいと言われた、そういう感覚を持っておられるんです。僕の伯父が去年亡くなったんですが、志願して19歳で満州に行って、引き揚げできた人です。軍の中で彼一人しか車を運転できなかったから、トラックを運転していました。港に帰ってきた時は2台爆弾で殺されて、彼一人だけ帰ってきて、後から行った人はみんな亡くなっている。自分から志願した人は”良い”戦地に行けるけど、後の人は”悪い”戦地。どうやって同級生が戦地に連れて行かれていったのか聞くと、先に戦争に行った子のお母さんたちが「五人組」をつくります。そして行ってない家に押し掛けて「うちの子は行きましたよ。お宅はまだ行ってないんですね」と言うんです。日本人ですから、それではうちも出さないと悪いと言って、6人目が出ていく、そういうことが国家としてあったわけです。

だから9条に指一本触れてはいけないわけではないけど、そういう事実も知った上で、この議論をしないといけません。安倍さんにしても自民党の若手議員にしても「竹島がやばいから」と言いますが。我々日本国民は流されやすいし、テレビでそう言われたら弱いから、慎重にならないといけない国だと思います。

「赤紙」ってあるでしょう。日本に何枚ぐらい残っていると思いますか? あんなに何十万枚、何百枚と配られた、それがなんと15枚しか残ってないんです。それも昭和館とか戦争の記念館とか。全部国が回収したんです。だから絶対表に出ない。唯一残っているのが東京の九段にあります。どこの家でも残ってそうでしょう? だからこれは、「狂気」なんです。

参加者
配って、回収するんですか?

梅村さん
回収するんです。絶対外に見られないように。だから今日本に十何枚しか残っていない。それぐらい国家は統制したわけです。「赤紙というものがある」という噂になっていたわけです。

参加者
15枚は何で残っていたんですか?

梅村さん
たまたま誰かが渡し忘れていたとか、回収し忘れていたとか。

参加者
すぐ燃やしていたとか、ですか?

梅村さん
表に出ないように全部処分していたということ、ですね。

参加者
それが、権力だということですか。

梅村さん
そうですね。それぐらい権力というのは徹底していただろうと思います。凄いことですよね。僕も議員になってからこういうことを知ったんです。医者やっている時はこんなことは知りません。たまたまこの世界に来て、右翼的な高齢者の議員さんと話すこともあるし、石原慎太郎さんたちと意見交換することもあるし。いろんな意見を聞くわけです。その中で自分のスタンスを決めていきます。憲法学者に聞くと、「今の自衛隊は憲法違反だ」という意見が多数みられます。軍備力を持たないと書いてあるわけですから、あれは軍備力だと。だけど当時は警察予備隊の想定だったから、今の自衛隊のような形は想定していないです。それを今の改憲派は突いてきて、「憲法学者も言ってる、今の自衛隊は違憲だと言っているから、僕らは集団的自衛権まで入れて国防軍をするんだ」と。話が3階4階に上がって行ってしまっています。だから今の自衛隊は、個別的自衛権については憲法上認めていますということを書いた方がいいんじゃないかという説を僕は取っています。それが”ゼロか100か”になって、今は”100”になって持って行かれようとしています。だから現状の自衛隊については日本で認める唯一の自衛権ですと書いた方が歯止めがかかるんじゃないかというのが僕の意見です。だけどできる限り変えない方がいいと言う方もいる。どっちの意見も見方の違いです。

 

(つづく)

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

     ■             ■             ■            ■

 

 

 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

■「日本国憲法は大日本帝国憲法を改正したもの」

参加者

憲法は今がパーフェクトだと思いませんけど、一部の国会議員が言うように、本当に今の憲法は押し付けられたものなのでしょうか? 当時の国会の審議があったわけで、その中で吉田茂さんが9条2項について答弁したのは有名ですよね? そういった歴史的事実を捻じ曲げてまで押し付けられたと言っているような気がするんですが、果たしてそのことを分かって自民党は言っているのかどうなのか、と思いますが。当時憲法制定に関して国会の議論はあったはずだし、私も読んだことはありますが。


梅村さん

事実関係だけ申し上げると、今の日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正案なんです。この事実がほとんど世の中に知られていなくて、大日本帝国憲法を一度破棄して日本国憲法ができたかというとそうではない。あれを改正手続きしているんですね。でも歴史の教科書ではそう教えていない。全く新しいものがGHQから降ってきたように思われるんですが、まずそういうものが事実としてあります。仰るように、当時の立法府含めて国民が選択したものですから、この事実を皆さんに知って頂きたいと思うんです。今の若い政治家や有権者もどうしてこういう話が勢いを持ってくるのかと言ったら、戦争直後は焼け野原になって、ひもをひっぱったらここは俺の土地だと言って、地籍調査なんてやっていないんです。大阪も太閤秀吉以来地籍調査なんてやってないんです。だから線を引いてここが自分の土地だと言って生活が成り立ったり、新しい財産ができたりすることがあるんです。その時の話を又聞きするところによると、一回ごちゃごちゃに世の中をリセットして、できれば若者を中心に世の中をリセットしようと。スクラップしようというような感覚が、そういう鬱積したものが充満してきている。その時に「憲法が押し付けだ」と言われるのがとっても都合がいいもので、だからスクラップしようという、民族主義みたいなものになってきてしまっています。だからこれは若者世代の鬱積、そういうものが憲法の話に絡められて、一部のネットメディア中心に、一部一般紙もそこに乗ってやっている。次の世代のそういう鬱積したものをどう解決していくかということとセットじゃないかと思っています。


樋口さん

私からは一点。自民党さんの中にも様々なご意見があります。右の方もいればそうでない方も。皆さんが皆さんがそうなっているわけではなく、あまり大きな声では言えませんが、「公明党さんがんばってくださいね」と仰る方もおられます。そのことだけお伝えしておきます。

 

参加者

「加憲」の場合も3分の2のハードルはあるんですか?

 

梅村さん

もちろん、現時点ではあります。中身を変えるのも、96条を変えるのも、3分の2。だから中身をちゃんと議論した方がいいんです。

 

(つづく)

 

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

梅村さん
梅村さん

■政治は「携帯電話」

 

梅村さん

梅村聡と申します。今みなさん「政治」という言葉を何回か言われましたけど、その言葉を「携帯電話」に置き換えてほしいんです。携帯電話の中身は、僕も分かりません。どういう仕組みになっていて、タッチパネルはどうなっているのか、どうして電源が入るのかとか、誰も分かりません。でも使いこなしてますよね。一日に何回も電話して、メールして、Facebookして、と使いこなしているわけで、携帯電話はそれで事足りてるんです。でも、こと「政治」となると、この中身を知らないことをみなさん罪深く感じているんです。何を話して、どういう情報を発信するかが大事なんだけど、「政治」になった途端に「わたしは仕組みが分かりません」とか「40年以上生きてきたけど、分からないです」とか言うんです。でも携帯の仕組みを知っているのはメーカーで働いている技術職の方です。僕らも「政治の仕組みを説明してくれ」と言われたら、いくらでも説明するんですが、「使う」ことの方に一度参加してもらった方が面白いと思います。もちろん、どうやって政治家が生まれたりとか、普段どういう活動しているかとか、それも大事だから、質問して頂ければ僕ら答えるんですけど、政治は「携帯電話」と思ってもらいたい。この表現が正しいかどうか分からないけど、一回使っていただきたい。今日はそういう”サンプル”として僕は来ましたので、今日は僕を使ってもらえたらと思います。そんな思いで参加させて頂きました。よろしくお願いいたします。

樋口さん
樋口さん

■市民の英知を政治に

 

樋口さん

昨年12月に通ったばかりで、一生懸命頑張らせて頂きたいと思っています。樋口尚也と申します。10月31日まで、清水建設というところで営業マンをしておりました。私はド営業マン、ドサラリーマンです。だから私は今日本の政治にとって何が大事かと聞かれたら、「営業が大事だと思います」という風にお答えしています。営業マンが少なすぎる、日本の営業ができないから、日本の皆様に喜んでいただけないんだと思っています。今、(梅村さんに)素晴らしい例えをいただきました。私は政治を身近に感じていただくことが、一番の仕事だと思っています。なので、国会宿舎の方にも多くの友人や支持者をお招きして、身近で見てもらおうということをFacebookなども通じて、一生懸命やっております。「ガバメント2.0」と申しまして、これから世界が求める政治のスタイルは、市民の皆様の英知を政治に反映することだと言われています。これがこの60年ずっと、できなかったんです。政治家と官僚の皆さんが密室で決めるということがあったのかもしれませんけど、これからはみなさんの英知をそこに降り注いで、新しい政治のスタイルをつくるというのが、今の新しい流れだと思っています。ぜひ身近に政治を感じて頂けるように、今回はありがたい機会で、またつながらせて頂きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

つづく

2015年

9月

06日

書籍「地域包括ケアの課題と未来‐看取り方と看取られ方」出版のお知らせ

 今日は私、代表熊田の個人的なお知らせです。私が2014年から1年間勤めた亀田総合病院(千葉県鴨川市)地域医療学講座が千葉県より助成を受けて出版した書籍「地域包括ケアの課題と未来‐看取り方と看取られ方」(ロハスメディア社)が発売されました。

 盛んに言われる「地域包括ケア」に関して、各地域が恐らく共通して抱えている、もしくは今後ぶつかるだろう課題について、各分野の専門家がピンポイントで語っています。贔屓目ではなく、地域医療介護の抱える問題をこれほど網羅した書籍は見たことがないと思っていますし、業界のタブーに切り込んだ部分が随所に見られます。医療介護職や行政など専門職向けにはなりますが、ぜひお手にとってご覧いただきたいと思います。

 

 地域医療介護や地域包括ケア、高齢者医療については様々な書籍が出ていますが、どれも痒いところには手が届いていないというか、臭い部分には蓋をしてあるというか、正直に言いますと綺麗事が多くて切り込んだ部分が少ないという印象を受けています。

 今回、亀田総合病院地域医療学講座が出したこの書籍は、地域医療介護に関わる多くの人たちが漠然と抱えている疑問や、ぶつかっている課題について、問題点を列挙する形で述べています。さらに、これまで業界のタブーとしてはっきりと語られてこなかった部分にもズバッと切り込んでいて、編集に関わった私も「こんなことを言っていいのか…」と驚嘆する内容が多々ありました。

 病院医療、在宅医療・介護、認知症、貧困と健康、社会的包摂、生活支援、地域包括ケアの理論と背景など、各分野の専門家がそれぞれポイントを短くまとめて語っています。ご覧頂ければ、「地域包括ケア」という同床異夢のテーマについてかなりクリアになると思いますし、今後の議論には必須の書籍だとも思います。

 僭越ながら、私も介護や胃ろう問題について書かせて頂いています。ぜひ、多くの方にご覧頂きたく思います。


■書籍紹介ページはこちら

2015年

5月

15日

第9回メディ・カフェ@関西 「看取った家族が後悔すること~終活を自己満足で終わらせない為に(仮)」6/7@大阪

医療について気軽に語り合う場を提供している市民団体「メディ・カフェ@関西」とのコラボイベントを6月7日(日)午後1時から、大阪市内で開きます。テーマは「看取った家族が後悔すること~終活を自己満足で終わらせない為に(仮)」。月刊文藝春秋5月号に書いた記事の話も織り交ぜながら、参加者の皆さんとざっくばらんに看取りや終末期医療について語っていきたいと思います。ぜひご参加ください!

(以下、メディ・カフェ@関西の告知文より)


第9回メディ・カフェ@関西
看取った家族が後悔すること~終活を自己満足で終わらせない為に~(仮)


空前の多死社会の到来を前に、いま、自分の人生の終わり方を考え、エンディングノートなどを記しておく「終活」ブームが盛り上がっています。
医療現場でも、患者や家族の意向を出来る限り尊重しようという雰囲気が高まり、事前指示書を導入する医療機関が増えています。医療技術が進歩し、 救える命が増える一方で、時と場合によっては、患者も家族も望まない「延命治療」になる場合もあるからです。家族は、突然、本人に代わって治療を受けるか どうかの選択を迫られます。エンディングノートやリビング・ウイルに「延命治療は望まない」と書かれていても、家族は悩み、迷い、看取った後も後悔の念を 抱き続けることが少なくありません。

医療技術の進歩と限界、揺れる家族、困惑する医療者、模索する「看取り」の現場を取材し続けている、医療問題ジャーナリスト熊田梨恵さんをお招きして、自己満足で終わらない「終活」について、考えたいと思います。

【スピーカー】 熊田梨恵さん(医療問題ジャーナリスト)         

【日 時】 6月7日(日) 午後1時30分より

【場 所】 リゾートダイニング アルビノ (肥後橋)
      アクセス http://www.albino.co.jp/access.html

【会 費】 2000円

【定 員】 20名(先着順)

【お申し込み方法】 お名前、ご連絡先、簡単な自己紹介を添えてお申し込みください。


※メディ・カフェ@関西のHPはこちら

2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

12月

12日

梅ちゃん先生のティールーム第2回~井上清成・弁護士⑤「解決」までが医療

右から梅村聡氏、井上清成氏、熊田
右から梅村聡氏、井上清成氏、熊田

梅村:先生とお話ししていて気付いたのですが、先生はもちろん裁判などで医師を守る場面もあるとは思うのですが、結構斜めから見てはるんですよ。例えば医療事故調の議論の中で「自分たちで解決していくプロセスも含めて医療なんだ」ということをおっしゃってますよね。そのプロセスをつくって医療界に内包していかないと、本当の意味では国民から信頼されない。それが本当の意味で医師を守ることになると。「医療というのは治す作業だけだ」と言って殻に閉じこもっちゃうと医療のレベルは落ちるし、国民からの信頼は無くなる、という思いで活動されていると僕は思いました。


井上:その通りです。ある講演で患者の立場の方から、「井上先生はなぜ『本気でお医者さんを守ってやる』と言えるんですか」と言われました。私は一言、「だって、今攻撃しちゃったら、ぎりぎりの医療がもっとぼろぼろに崩れちゃうでしょう。そうすると損するのは私たち国民でしょう」と言いました。その意味は、なんでもかんでもお医者さんを守ればいいということではなくて、彼らが自らしておかないといけないことはある、ということです。うまく事故調をやっていれば自分達の身を守れる、そういうメリットもあるからやろうよと言ってるんですね。

梅村:医師の中にも、人間として許されへんようなことする者が、一定割合はいるんです。事件とかで表沙汰になるのはそういう人らです。でも、そういう人に限って裁判闘争やマスコミからの袋叩きに遭っても生き残るんですよ。でも、大多数の医師は普通の人で、悪いことなんかしません。ところが、一部の悪いやつらのために彼らまでがバッシングされている雰囲気になり、ドロップアウトしていくんです。ゴキブリを殺さなあかんと思って殺虫剤をまいたら、家の大事な家畜とかペットが死んでしまい、肝心のゴキブリは逃げ足が速くて逃げてしまった、というような感じでしょうかね。


井上:弁護士の場合は、人の金を着服したりするのがいます。そういう人間を少なくしようと思ったら、弁護士という職業を儲かるようにしておけばいいんです。お金に困るから着服するんですからね。生活のレベルを下げるか儲かるようにするかのどちらかで、これはバランスなんだけど、そういうことを総合的に業界として考えてやらなきゃいけません。でもどうやったって酒を飲んで金を無くしちゃうような、そういうばかがいるんです。これは弁護士にも、医者にも一定確率います。マスコミならねつ造の記事を書いたり、昔の写真を使っちゃうようなやつが一定確率いるんですよ。そんなのは当たり前で、どんな業界でも、どんな聖人君子と言われる職種であっても、必ず一定確率います。それを大前提に考えなくちゃいけないんです。ヒューマンエラーをゼロにはできないのと同じなので、ゼロにしようと思うところに無理があります。だからできるだけそういうやつを少なくするにはどうしたらいいか、と考えないといけない。それをゼロにする政策をとろうとするから、梅村先生がおっしゃるように、周りが死ぬわけです。


梅村:家中に殺虫剤をまけばいいわけですからね。


井上:結局みな自己統制して、全体が沈滞したら何が起こるか。マスコミの場合は、国民はいろんな事実を知ることができなくなり、情報統制されて時の権力者の思うようになります。お医者さんなら、国民は積極的な医療を受けられなくなる。


梅村:国民が良い医療を受ける権利を侵害されるんですよね。


井上:悪いのをあげつらえば、真面目なやつが引いていきます。だから他の分野の手口を動員してでもやるしかないわけです。

梅村:先生は、そのために法律という手段を使っておられるんですね。


井上:はい、私はあくまで法律家なんです。今は法律と医療の間に大きなギャップがありすぎるから、法律を医療に使うとろくなことがないと思うわけです。だから法律の使い方を考えるか、アレンジをするか、法律自体を変えていくか。みんな「医療を法律に合わせろ」みたいなことを言うんだけど、それはナンセンスだと思います。法律がそもそもずっこけてるんだから、という発想を持っているんです。そこから発言しているので、アプローチが違うんですね。もちろんお医者さんたちにもやってもらうことはやってもらわないと困るわけですが。


梅村:先生はそう考えたら根っからの弁護士で、士(さむらい)業なんですよね。


(おわり)

 

 

①警視庁管内で公安担当だった父の影響で弁護士に

②子ども心に見た警察組織の裏側

③“教育崩壊”と“医療崩壊”の構造は同じ

④“萎縮医療”で損するのは国民

2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

================================ 

 

■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

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2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

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2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

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2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
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2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

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2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

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2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

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2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

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2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

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2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

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2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

     ■             ■             ■            ■

 

 

 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

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2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

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2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

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■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

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2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

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2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

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素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

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白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

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2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
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2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」Amazon紹介ページ

2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

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2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

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2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

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2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

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2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

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2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

     ■             ■             ■            ■

 

 

 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

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2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

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2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

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■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

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2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

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2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

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2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
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2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

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2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

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2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

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2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

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2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

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2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

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2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

     ■             ■             ■            ■

 

 

 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

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2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

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2015年

4月

13日

文藝春秋5月号に終末期医療の記事掲載

 現在発売中の月刊「文藝春秋」5月号医療特集に「看取った家族が後悔すること」という記事を書いています。ぜひ、お手に取って頂けたら嬉しいです!

 

 今回の記事を書くきっかけになったのは、取材で出会ったご家族の言葉でした。認知症によりコミュニケーション不通となった義母を病院で看取ったお嫁さんが「義母に延命治療をしないと、夫と二人で悩んで決めたけど、本当にそれでよかったのか後悔している」と話してくれたことです。私から見れば、そのお嫁さんはとても丁寧に介護を続けてきておられたし、義母の最期にも何も不自然な点はなく、老衰による自然な最期でした。「無理に延命をしない」という方針も、夫とよくよく話し合って決めておられました。それなのに「後悔している」と話されたので、逆に驚いたのです。これだけ真摯に介護をしていながら、なぜ後悔が残る? これが、取材のきっかけでした。


 詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、私がこの記事で一貫して主張しているのは「最期の医療・介護の希望について、家族など大切な人と共有しておくこと。そして、なぜそうしたいかという『理由』も必ず共有すること」です。


 今、エンディングノートやリビングウィルなど生前意思を残すツールが様々出てきました。病院でも、最後の医療の希望を患者が記す「事前指示書」が広まりつつあります。しかし、それらはほぼ「形」だけ。例えば「胃ろうはしたくない」と本人が希望していても、「なぜ胃ろうをしたくないのか」が分からなければ、他の事態が発生した場合に家族や医療者も応用して考えたり、対応したりできません。例えば、「最期まで口で食べたいから」「胃ろうの姿が嫌だから」など、理由が分かれば、周囲はいくらでもケアの方法を考えることができます。本人の意向を尊重できます。


 一つ極端な例え話をします。あなたの配偶者が「臓器提供は希望しない」と書いていたとします。そして、配偶者が脳死になったとして、子どもに臓器提供することが望まれる場面が起きたとします。あなたなら、どう考えるでしょうか? 「自分の子どもにならいいと本人も思うのでは?」「自分の子どもであっても嫌だと思う理由があるかも」など、様々な思いが巡ると思います。そこでもう一歩踏み込んで、本人がなぜ臓器提供を希望しないのか、という「理由」まで分かっていれば、より具体的に考えられると思います。単純に「〇〇の医療を希望する、しない」という「形」だけでなく、なぜそう思うのかという「価値観」を共有しておくことが大事なのです。


 しかし、今の”終活ブーム”にしても、事前指示書にしても、その「価値観の共有」という部分は、すっぽり抜け落ちていると私は感じています。手間暇がかかるわりに、儲からないからだと思いますが。しかしそれでは、国民の医療に対する満足度、安心感は向上しないと思います。


 事前指示書については、医療者の中では訴訟のための免責と考えている雰囲気が否めません。「事前指示書の記入は条例化すべきだ」などという意思の意見を聞いたこともありますが、それでは国民の医療界に対する反発、不信はますます強まると私は思います。事前指示書という「形」だけが走ると、ますます医療者と患者の溝が深まる、という個人的な危機感もありました。これは何とかしないといけないと思って、今回の記事に至ったのです。

 

 その手助けとなるのが、紙面でも紹介した「Advance Care Planning(ACP)」です。ACPは「将来に備えて、今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」と定義され、自分が重篤な病気などになった時のために、どこでどのように過ごしたいか、大切にしているのは何か、どのような医療を受けたいか、受けたくないかなどを話し合う過程を意味します。本人の価値観を引き出していくプロセスに重点を置く新しいメソッドです。事前指示書は、ACPを行った結果として作られることもありますが、必須ではありません。ACPによって医師とのコミュニケーションが改善されたり、患者や家族の満足度が上がって遺族の不安や抑うつが軽減されることなどが報告されており、カナダやオーストラリア、台湾など、世界各地に広がっています。日本にACPが紹介されたのはここ数年のことですが、医療界では徐々に広がりつつあります。


 私は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)でACPを普及啓発するワークショップなどを行う医師らと出会い、可能性を感じて取材をさせて頂きました。


 ACPはまだ始まったばかりですが、注目する人たちも増え、これから広がっていくと思います。ただ、人材育成や環境整備などのハードルは高いので、簡単ではないでしょう。


 まずは私達国民も「自分のことは家族がいいようにやってくれる」なんて思わないで、積極的にどう最期を迎えたいのか、情報収集し、家族など大切な人達とそれを話し合うことが必要です。医療の「ヒト・モノ・カネ」は今後さらに厳しくなりますから、望むような死に方ができる時代ではなくなっていくと思います。「縁起でもない」なんて言っていたら、本当に縁起でもない亡くなり方しかできない厳しい時代が来ていると、私は思っています。






2014年

11月

17日

文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に記事掲載

 現在発売中の文藝春秋オピニオン「2015年の論点100」に拙記事「年間47万人へ―看取りなき『その他死』が激増」が掲載されています。

 ぜひ書店などでお求めいただけると嬉しく思います。


 今回の論旨は、日本の高齢化に伴う死亡者数増加により、死ぬ「場所」がなくなってしまうという話です。一体どういう意味でしょう?

 

 日本人の死に場所は、「病院」「高齢者施設」「自宅」の3つに大別されます。今後、高齢者増に伴い死亡者数も大幅に増えますが、この3つはほとんど増えないのです。つまり、死ねる場所が亡くなってしまうということです。厚労省は、死ぬ場所のない人たちが47万人いるという衝撃のデータを発表しており、彼らの死に場所を「その他」としています。「その他」が何なのかは、ぜひ書籍を手に取って頂ければと思います。


 私が医療業界紙の記者をしている頃、今回の「47万人データ」のように、一般からすればとんでもない話であるにも関わらず、業界の中だけで眠ってしまっている話がたくさんありました。それがなかなか一般にまで広がらないのは、医療に関する制度やお金の仕組みが複雑だからに他ならないと思っています。私が一般向けにものを書き始めたのは、こういう業界の中だけで収まってしまっているビックリの話題を、分かりやすく伝えたいという思いがあったからでもあります。今回は、その思いが形になったと思っています。


 ぜひご覧いただけると、嬉しく思います。



2014年

7月

17日

「子どもの虐待、ためらわず警察と児相に通報を」~埼玉・久喜市で医療、消防、行政連携の自主勉強会

小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)
小児救急勉強会会場の様子(埼玉・久喜市の済生会栗橋病院)

「虐待だと思ったら、重症度に関わらずためらわないで警察と児相(児童相談所)に通告しましょう」――。済生会栗橋病院(埼玉・久喜市)で7月2日に開かれた医療者と消防機関、行政の勉強会で金子裕貴医師が訴えた。子どもの虐待は年々増加しており、虐待の疑いのある子どもの救急搬送に関わる救急隊や医療者からの通報が早期解決の鍵を握っている。

 同病院は小児科医と消防機関の連携に関する勉強会を定期的に開いており、これまでにも学校教諭や児童の親も参加したアナフィラキシーショックの勉強会などを行ってきた。医療機関と消防機関、テーマによって教育機関や行政なども参加するめずらしい勉強会だ(詳しい説明はこちら)。

 

■テーマは「児童虐待」

 今回のテーマは「虐待を知り適切に行動する」。同病院のほか近隣の医療機関の職員、救急救命士や救急隊などの消防職員、行政関係者など約130人が参加した。

 

 2012年度に全国の児童相談所で対応した虐待相談は66807件と過去最多を更新。救急隊は虐待を受けた疑いのある子どもを医療機関に搬送する場合があり、診察した医療者が救急隊からの情報を得て児相や警察に通告することで早期解決につながる可能性がある。特に住居の環境や家族の様子、本人の振る舞いなどは現場でしか得られない重要な情報だ。

 

 副院長の白髪宏司氏は今回の勉強会の意図として、「救急搬送で虐待が疑わしい時、救急隊がどう医療者に伝えるかが重要。ただ、救急隊から医療者に伝えにくい雰囲気があったり、そうかもしれないと思っていてもためらって後回しになることもある。医療者も救急隊からゆっくり言ってもらうと受け入れは変わってくると思う。救急隊が通報を受けて現場に行った時の雰囲気や家の状況を伝えるシステムがあればと思っていた。誰も通告するのには抵抗があると思うが、そのハードルを下げるとっかかりにしたかった」と話した。また「医療者は虐待に出遭った時に声を上げることが大事。社会の一員として虐待の連鎖にならないようにしていく責務がある」と、医療者が通告することの必要性を述べた。

 

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≪救急搬送事例:向精神薬を誤飲した12歳男児≫

 

最初に埼玉東部消防組合消防局の職員が、父親に処方されている向精神薬を誤飲した12歳の男子児童の搬送事例を報告した。以下はその要約。

 

・母親から20時半頃に119番通報があり、救急隊が駆け付けると男子児童の姉が自宅前にいて、2階子ども部屋に案内した。父親と母親は1階居室にいて声をかけたが、出てこなかった。

・男子児童は子ども部屋の中をうろうろ落ち着きのない様子でいて、救急隊からの質問には答えなかった。

・救急隊が母親に尋ねると、朝起こしても起きなかった。「ベッドに薬が落ちているのをお兄ちゃんが見つけて、いつ飲んだかは分からない。様子を見ていたが、行動が変なので救急車を呼んだ」と話し、男子児童は風呂に入ったり、奇声を発したりしていたという。

・男子児童のバイタル等は問題なかったが、虚ろな状態で、救急隊が全身を観察すると背部に成人の手形、打撲痕を観察した。

・病院の医師による初診名は意識障害で、程度は中等症。

・救急隊が母親に打撲痕について尋ねると、「なかなか起きないのでみんなで背中を叩いた」と話した。

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■会場からの質問 

会場:救急隊として活動する中で、どこでどのようなことを元に虐待を疑ったのか?

 

発表者:現場に着くまでは虐待については考えなかった。車内収容した時に全身を観察して、シャツをめくると背中に打撲痕があったので虐待を疑った。

 

会場:通常なら薬物中毒を疑い、虐待ということは見過ごされそうなケース。救急隊がシャツをめくって背中を見たという観察がすごいと思った。

 

発表者:薬を飲んだかどうかも分からず、児童がなぜこういう状況になったのか分からないので観察した。

 

会場:保護者からクレームをつけられないかと気にならなかったか。

 

発表者:間違っていたとしても、少しでも疑いがあるのならこの子のためにと思った。

 

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2014年

7月

09日

胃ろうの勉強会、地元紙に取り上げていただきました

7/8付房日新聞1面
7/8付房日新聞1面

 7月8日付房日新聞の一面に、先日の講演会の様子を取り上げて頂きました。お世話になりました皆様、ありがとうございました!


 胃ろうをめぐる様々な価値観や倫理的問題、制度的背景、医療界の動向などについて話しました。特に家族の思いについてはグループワークを通じて感じて頂くことに重点を置きました。


 私がこういう講演をする時のモットーは、実用的な内容であること。話を聞いても使えなかったら意味がないと思っています。何かすぐにでも使えるツール(コミュニケーション、考える素材など)、役に立つものを持って帰ってもらうようにしています。倫理的な話だけで終わると、もやもやしたまま帰ることになるので、何か行動につなげて頂くことでその方なりのアウトプットにしてもらえたらと思っています。難しい話で終わるのは、話す側の自己満足かなと感じています(難しい話を求められている場ならそれでいいのですが)。

2014年

6月

02日

【事務局より】HP表示に関する不具合のお詫び

 先月中旬より、HP内で「続きを読む」をクリックするとリンク先が真っ白になり、表示されない不具合が続いております。読者の皆様にはご不便とご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

 

 このHPのシステム管理をするJimdoサポートデスクに再三にわたり問い合わせておりますが、具体的な返事を頂けておりません。復旧のめどについても連絡がないため、私どもも記事を掲載することができず大変困っております。Jimdoサポートの対応が的を得ないため、他社のシステムに変えるべきかを悩んでいるところです。

 

 皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。1か月以上Jimdoサポートより連絡がないようでしたら、HPについては別の手段を検討します。

 

パブリックプレス事務局

2014年

5月

19日

6/27「胃ろうって何だろう」勉強会のご案内(千葉・鴨川市)

 「記者が見た胃ろうの光と影」をテーマに、胃ろうをめぐる価値観や倫理問題などについて6月27日、亀田医療技術専門学校(千葉県鴨川市)で講演します。主催は安房地域難病相談・支援センター。著書「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の取材内容から話そうと考えているところです。興味のある方なら誰でも参加できますので、ぜひどうぞ。

 

■プログラム案内文

近年,装着する人が急速に増えた「胃ろう」。胃ろうがどのような物なのか,胃ろうを造るということがどのようなことを意味するのか,是非この機会に知っていただき,ご本人,ご家族さま等身近な方と話し合う第一歩にしていただきたいと思います。

 

■日時 2014 年6月27日  13:00~15:30

 

■会場 亀田医療技術専門学校2階講義室

 

■プログラム

①13:00 ~ 13:30

医学講座「胃ろう」について…

安房地域難病相談・支援センター センター長 小野沢 滋 先生

②13:30 ~ 15:30

「記者が見た胃ろうの光と影」

医療問題ジャーナリスト

特定非営利活動法人 パブリックプレス 代表理事 熊田 梨恵

 

■参加費 無料

 

■主催 安房地域難病相談・支援センター

 

■問い合わせ・申し込み先

亀田総合病院地域医療支援部内 安房地域難病相談・支援センター事務局/担当:反田・山本

TEL04-7092-2211 FAX04-7099-1121

勉強会のチラシはこちら。
胃ろうって何だろう勉強会案内.pdf
PDFファイル 189.7 KB

2014年

3月

28日

高齢社会、結局何を準備しておけばよいのか~3/14正福寺様での講演

ワークショップの様子
ワークショップの様子

 去る3月14日、大阪・蛍池の正福寺様で講演をさせて頂きました。テーマは「いのちを考える~医療の現場から見えるもの」。一般向けの講演だったので、今後の高齢社会を迎えるに当たり医療介護について何を知っておけばよいのか、何を考えておけばよいのかといったことを中心にお話しさせて頂きました。著書「救児の人々」や「胃ろうとシュークリーム」に出てきたご家族の話などを題材に今の医療現場が抱える問題をお伝えし、胃ろうについてのロールプレイも行いました。

 

 どんなテーマで話そうかとかなり悩みました。私が取材してきた延命医療などの話は、誰もに起こり得ることではありますが、いざその立場になってみないとなかなか考えないことでもあります。今の日本の医療が抱える問題は切実ですが、実感してもらうにはどうしたらいいかと思うと、悩みます。

 

 そこで、医療問題の話の後に、想像しやすいように具体的な体の話をすることにしました。終末期に向かう体に起こり得ること(痛み、呼吸が止まる、栄養を摂取できなくなるなど)とそれに対する医療処置の種類など。国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」を例にお話ししました。

 

 次に、延命医療に関する問題を実感していただくため、昨年この正福寺様でもさせて頂いたロールプレイを行いました。主治医に勧められるままに胃ろうを造設した認知症の妻、妻を介護してきた夫、息子、妻の主治医などの役割を演じます。ロールプレイは、最初は皆さん戸惑われますが、やっていくうちに「なぜ胃ろうが延命になってしまうのか」「どうしてこういうことが起こるのか」をすっと考えられるようになるようです。一般論だけでは聞き流してしまう話でも、ロールプレイを交えると「無関係ではない」と感じて頂けるようで、意外と好評なのです。終了後、「胃ろうが延命になる意味が分かった。でも自分も何も知らないからこうなると思う」「今のうちに考えられることは考えておこうと思った」などのご感想を頂きました。

 

 確かに普段から考えておくことは大切ですし、いざとなった時に延命医療を行うかどうかは家族や大切な人たちと話し合っておいて頂きたいと思います。私もそうするようにしています。ただ、それ以外の医療や介護の話は、情報を得ておくといっても何をどう知っておけばいいのか分からないと思います。私もこんな仕事をしていなかったら、高齢者施設の見分けもつかないでしょう。だからこそ、「相談できる場所」を見つけておくことが大事だと、こういう講演の時にはいつも話します。どこが「相談できる場所」なのか、人によって地域によってバラバラだと思います。地域包括支援センターであったり、介護家族のつどい場だったり、近所のカフェだったり、ご近所さんの集まりだったり、ネット上の信頼できるコミュニティだったり……。人によって違うからこそ、そういう「場所」だけは、アンテナを張って探しておいてほしいと思うのです。こればかりは、いざとなってから探すのは大変です。そして、「かかりつけ医」です。自分や家族の医療について、信頼して相談できるかかりつけ医を必ず持ってもらいたいという話をします。

 

 これからの医療・介護は情報合戦の時代だと、私は思っています。医療介護のサービスにばらつきがあり、手薄にならざるを得ない状況もある時代です。望む医療や介護を受けられるようにすることは、簡単でないと思っています。だからこそ、医療情報には「場」を、より良い医療を受けるには「かかりつけ医」を。ここだけは押さえておいてもらいたいと思っています。

 

2013年

12月

19日

ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」ダイジェスト

 今年7月に出演したFM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」で話した内容のダイジェストが、番組HPに掲載されています。当日話した内容が掲載されているので、ぜひご覧くださいね。

 

 掲載ページはこちら

 私が医療問題ジャーナリストを志したきっかけとなった親友の死、救急医療、妊娠・出産、高齢者の増加によって今後死亡場所がなくなるかもしれない問題、官僚の取材をしながら感じたことなどが掲載されています。

 

 お世話になりました、プロデューサーの大畠さん、MCの山村さん、ありがとうございました!

2013年

12月

12日

Newsweek日本版ムックにインタビュー記事掲載

 Newsweek日本版のムック『0歳からの教育』で、産院選びに関して熊田が取材を受け、コメントが掲載されています。

 

 近年、『私らしいお産』などといった言葉で、自宅分娩や水中分娩など、様々な形の出産が注目されています。しかしその陰には、予測できないトラブルや、医療機関ときちんと連携していない助産院の対応によって、母児の命が危険にさらされるケースもあるのです。

 医療機関での出産は、多くの医療従事者らの努力によって守られているものです。『自然』という言葉に惑わされず、安心で安全なお産をするために、お産をする場所を選んでほしいと思っています。

 

 コメントでは、そういった内容を話しています。書店等で手に取る機会があったらぜひご覧ください!

2013年

11月

23日

門前薬局の差別化を図れ! ~天満カイセイ薬局の待ち時間解消サービスの取り組み

患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)
患者に血管年齢測定の説明をする天満カイセイ薬局の大上直人薬局長(右)

 薬局の競争が激化する中、差別化を図ろうと患者サービスなどの取り組みを始める薬局が増えつつあります。関西に34か所の薬局チェーンを展開する株式会社育星会では、4月の社員研修で新しい取り組みを考えるグループワークを行い、各店舗で決めたアイディアを実行しつつあります。私は研修時、「実際に行っているところをぜひ見たい」と話していたので、いくつかの店舗のイベントにお邪魔してきました。

 11月16日にお邪魔した天満カイセイ薬局は、通りを挟んだ向かいに約700床規模の3次救急病院があり、門前薬局激戦区に位置します。周囲との差別化が課題とされる中で取り組んだのは、待ち時間解消のための健康イベントの実施。機器を使って血管の硬さなどを測る「血管年齢測定」や、脳の前頭前野の働きを見る「脳年齢測定」のサービスを行いました。

 「ここで『血管年齢』と『脳年齢』を測定できるので、ちょっとやってみて行かれませんか?」 薬局長の大上直人さんが処方箋を出しに来た女性患者に声をかけます。女性は「ほんまの歳よりも上になったらどうしよう」と言いながらも、笑って測定機の前に座ります。「指を挟んで測定しますので、しばらくお待ちくださいね」。大上さんが女性の指に測定機器を挟むと、女性はしばらくの間腰掛たまま待ちます。測定が終わり、画面に結果が表示されました。「ああ、歳よりも若かったわ~」。女性は嬉しそうに大上さんに向かって笑います。「今飲んでおられる高血圧の薬が合っていることもあるかもしれませんね」。大上さんが言うと、女性は「よかったわ~」と安堵した様子。大上さんは「脳年齢」の測定も勧めましたが、「それこそ歳より上やったら嫌やから」と、笑って遠慮しました。

 大上さんと女性のやり取りが終わった頃には調剤も完了。薬剤師のスタッフが女性に薬を渡し、説明します。女性は会計を済ませ、笑って薬局を出て行きました。

 この日は10時から14時の間にイベントを実施。処方箋を持ってきた患者が薬を待つ間に利用してもらい、待ち時間の苦痛を緩和してもらうことが目的です。イベントを通して、患者に自分の身体や健康により関心を持ってもらったり、薬剤師と普段とは違うコミュニケーションを持ってもらうことも考えました。本社の持つ測定器を前日に搬入し、カウンター横に設置。薬剤師や薬局事務スタッフが声をかけ、まずは血管年齢を測定してもらい、興味を持った人には脳年齢も測ってもらうようにしました。

 

*今回使用されていた「血管年齢」の測定器は、指を機器に挟むことで計測するというもの。「脳年齢」はコンピュータの案内に従い、画面上に現れる1~25までの数字をタッチしていく速さで測るというものでした。

 

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2013年

10月

17日

胃ろうとシュークリーム御感想②北堀江病院、新宮良介理事長

 お二人目は北堀江病院(大阪市西区)の新宮良介理事長から。こちらはAmazonに頂いたコメントです。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

素晴らしい力作です。
慢性期医療、高齢者診療に関わり、ターミナル、看とりの現場にある医療者として、多くの課題とヒントをもらいました。
医療、介護関係者はもとより、より多くの一般の方に読んでいただきたい。
「胃ろう」を通して見えてくる医療の現場、問題を知っていただきたい。
そして、本当の Quality of lifeとは?さらには、Quality of deathとは?
共に考えていきたい。

 

           ■               ■               ■

 
 
新宮先生、ありがとうございます。
私もこの取材を通して考えましたが、死に方を考えることは、生き方を考えることですね。自分の最期を考えるとは、どのように生きるのかを考えることに他ならないと思いました。生は死があって際立ち、切り離して考えられないものなのですが、「生」にばかり執着して「死」を忌避しようとするムードが蔓延していると感じます。それでは何の解決にもならず、むしろ問題の先送りであるということは、この本にも出てきた内容ですよね。
 
 
 

2013年

10月

15日

胃ろうとシュークリーム御感想①済生会栗橋病院、白髪宏司副院長

 新著「胃ろうとシュークリーム」に頂戴した御感想を、皆様にもお伝えさせて頂きます。ご本人のご了承を頂き、掲載させて頂きます。

 

 最初は、済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長からです。

 

           ■               ■               ■

 

 

昨日から拝読させて頂き
先ほど、読み終えました。
胃ろうとシュークリーム

素敵なタイトルの意味が
深く刻まれ しみ込みました。

素敵な著書をお書き下さり
ありがとうございました。

それはとても大きな学びがありました。
小児科医として
57歳の大人として
多くのことを気づかせて頂きました。
本当にありがとうございます。
優れた方々を お一人お一人訪問された熊田様の感性に
敬意を表します。
原点は、患者家族の秋本様でした。
読み終えて、学び、再確認できたことは
「医療者は感性を持ち、誠意をもってどうすればよいかを 一緒に考える 考えられるように寄り添う」ことなのだと
きっと、赤ひげ医師は これをあたりまえにやっていたのでしょう。

 

 

           ■               ■               ■

 

 

白髪先生、ありがとうございます。

 

少ない取材活動の中でも、白髪先生は常に患者と家族に寄り添って考えたり悩んだりされる方だと感じております。そんな先生に、このようなご感想を頂戴できたことに、心からの感謝を申し上げます。

 

 

 

 

2013年

10月

15日

出版記念イベント@東京、ありがとうございました!

会田薫子先生(右)、熊田
トークイベント中の会田薫子先生(右)、熊田

 ご報告が遅くなりましたが、先月21日に東京・銀座で開いた出版記念パーティーを皆様のおかげで無事に終えることができました! 北は北海道から南は九州まで、定員を超える多くの方にご参加いただき、会田薫子先生(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)や近森正昭先生(近森病院透析外来・臨床工学部部長)から貴重なお話を頂戴しました。本当に、ありがとうございました!

 

近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声
近藤太郎先生(中)から乾杯のご発声

 最初は、近藤太郎先生(東京都医師会副会長)に乾杯のご発声を頂きました。

 

 続いて、会田薫子先生、近森正昭先生とのトークイベント。申し訳ございません、当日は手一杯で録音も何も録っておらず、頭の中が真っ白です・・・。

 

 それでも印象に残っているのは、会田先生のお話にあった「アルツハイマー末期でも胃ろうを選ばせているのはドクター自身の価値観(『胃ろうとシュークリーム』194頁)」という部分。また、日本老年医学会のガイドラインに沿ったコミュニケーションベースで意思決定を行い、栄養療法を差し控えていくことは法的問題にならないと、法曹関係者も賛同しているというお話でした。

 

近森正昭先生(右)
近森正昭先生(右)

 近森先生のお話からは、生きている人間に関する「基準」をどう考えるのか、ということを考えさせられました。私たちは第三者について、状況を知ることはできても、心の中を知ることはできないし、まして「幸せ」や「生きがい」などというものは分かるわけがありません。それでもそういったことに思いを馳せなければならない時、その人の体に手を入れねばならない状況になった時、何を基準にするのか、その基準をどう考えるのか。難しいけれど、考え続けないといけない問題だと思いました。

 

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2013年

9月

30日

新著出版記念イベント@大阪~10/27(日)正福寺

 東京に引き続き、関西でも出版記念イベントを開催します!

 10月27日午後1時から、大阪府池田市の正福寺にて。関西ではがらっと趣を変えて、命や死生観について考えるワークショップを行う予定です。普段なかなか考えたり話したりすることのない、家族や大切な人、そして自分自身の死や生を見つめる時間にしたいと思いました。場所をお寺にしたのも、そういったことを考えるにふさわしい場所だと感じたからです。終了後には懇親会も予定していますので、皆様ぜひご参加下さい!

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念イベント@関西

■日時:10月27日(日)13時~夕方

■場所:正福寺・本堂(大阪府池田市)阪急蛍池駅から徒歩10分 http://www.eonet.ne.jp/~showfuku-ji/

■内容:著書関連のワークショップ…家族や大切な人、自分の看取り、エンディング、死生観についてなど

■定員:25人(先着順) ■参加費:2,000円 

■お申し込みこちらのフォームからどうぞ(事務局からの返信をもって、参加確定とさせていただきます)。

■懇親会:18時頃から近隣で予定しております。ぜひご参加下さい!

※書籍は当日会場でも販売します。

 

当日、皆様にお会いできることを、心から楽しみにしております。ご参加、お待ちしております!

2013年

9月

05日

アレルギー児の発作、「迷ったらエピペン打って」~埼玉・久喜市で医療、教育、消防連携の自主勉強会

エピペンを太腿に打つ練習をする参加者
エピペンを太腿に打つ練習をする参加者

 「エピペンを持っている子がアレルギー発作を起こした時は、ためらわないで打ってください。早く打って悪くなることはありません」――。済生会栗橋病院副院長の白髪宏司小児科部長らが、急性アレルギー反応の症状を緩和する注射薬「エピペン」の使い方を学校教職員らに伝えた。東京調布市で誤食した児童が急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した事故以降、学校や医療機関、消防では、子どもの食物アレルギーへの対応が課題になっている。これを受けて済生会栗橋病院で8月27日、小学校の教職員や地域の救急救命士、市民向けに食物アレルギーに関する公開講座が開かれた。小児科医と救急救命士の勉強会が基になって開かれた、医療、教育、消防の連携するめずらしい取り組みだ。

 

◆調布市の小5児童のアナフィラキシーショック死亡事故

東京都調布市の市立富士見台小学校で2012年12月、乳製品にアレルギーのある小5の女児が給食を食べた後に、急性アレルギー反応の「アナフィラキシーショック」を起こして死亡した。学校はアレルギーを把握しており、担当教員は当初、女児にチーズを抜いたチヂミを出したが、女児はおかわりの際にチーズの入ったものを食べた。アレルギー発作を起こしている女児に、担当教諭は女児が所持していたエピペン(※)を使うかどうか尋ねたが、女児は拒否。その後校長がエピペンを打ったが、女児は病院に搬送された3時間後に死亡した。この事件を契機に、学校や幼稚園、保育園などでは食物アレルギーを持つ子どもへの対応がより検討されるようになり、各地で勉強会などが開かれるようになった。

 

(※)エピペン・・・アナフィラキシーの症状を緩和する注射薬。症状を起こす可能性のある子どもに医師が処方する。アレルギーの原因となる食物を摂取したり、呼吸困難など呼吸器系の症状が現れた時に使用する。ペン形の注射薬で、太腿などに打って使う。いつでも対応できるよう、常に身近においておくことが大事。学校などで子どもに発作が起きた場合に、使用する人の順位をあらかじめ決めておくなどの対応が求められている。

白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長
白髪宏司済生会栗橋病院副院長・小児科部長

 「どうする!?食物アナフィラキシー前後の対応~食物アレルギー児が普通にすごせるために~」をテーマに済生会栗橋病院が開いた市民講座には、久喜市立栗橋南小学校の教員や、地域で活動する救急救命士、子どもや家族ら約60人が参加した。白髪医師ら小児科医がアレルギーに関する知識や対応を講義し、学校と消防、医療機関の連携方法などを提案。エピペンの練習器具を使い、参加者は実際に打つ練習をした。

 

■小児科医と救命士の勉強会がきっかけ

 この公開講座が面白いのは、他地域で行われているような教育委員会主催のものではなく、地域の医療者や教職員、救急救命士らが自ら発案したという点だ。きっかけになったのは、白髪医師と地域の救急救命士らが開催している小児救急の勉強会「SQO(すくおー)会(Syouni…小児 QQ…救急 Operation…オペレーション)」。SQO会は、地域の小児救急のニーズが高まる一方で、小児医療について継続的に学ぶ機会がほとんどない救急救命士らの救急活動の質を向上させるため、救急救命士らが白髪医師に勉強会の講師を依頼して始まった。2012年2月から4か月に一度、症例検討を中心に開催している。これまでに、心肺停止やけいれん、ぜんそくなどをテーマに開かれ、病院の医師や看護師、薬剤師、事務職、栄養課、リハビリスタッフ、ドクターヘリチームのほか、診療所の医師や看護師など、毎回100人程度参加している。白髪医師は、「埼玉県内で小児救急に特化した勉強会はここだけ。彼らはよりよい救急活動をしたいという思いがありながら、学ぶ機会がなかった。勉強会での彼らの熱心さには毎回驚かされる。彼らから『勉強会での学習に従って処置し、搬送しました』と聞くと、顔の見える確かな地域連携を感じる」と話す。

 

 7月の「食物アレルギー」をテーマにした勉強会には、栗橋南小学校の養護教諭の廣澤久仁子さんら学校職員が13人参加。廣澤さんはこの内容を他の職員にも知ってもらいたいと提案し、病院が一般向けの公開講座として行う形になった。当日は25人の教職員が参加。廣澤さんは、「本校にもエピペンを処方されている子どもがいる。全ての教員がいざという時に対応できるよう、研修しておくことが大切。どういう症状の時に、どのタイミングで打つのかを理解しておくことが大事だと思う」と話す。

 

 白髪医師は公開講座の趣旨について、「調布のような事故がこの地域でも起きたとしたら、医療者は何をしていたんだということになる。私がエピペンを処方しているお子さんも地域に複数おられるし、前回の勉強会でも教職員や学校の栄養士さんがヒヤッとした経験があったことを聞いた。この講座で、まずそういう子どもが地域にいるという事実を皆で共有し、救急隊が子どもの存在を把握しておくことが大事だと知ること。学校教職員の方々には、誰がいつ打つのか、搬送の連絡ルートを作っておくことを考えてもらえたらと思う」と話した。

 

 
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2013年

8月

29日

新著出版記念パーティー9/21(土)東京・銀座で開催

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)の出版を記念して、パーティーを9/21(土)18時から東京・銀座で開きます。著書に登場する会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)、近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)という豪華なゲストをお招きしてのトークイベントを予定。取材にまつわる私自身の苦労話や書けなかった裏話を交え、ゲストからは延命医療や意思決定のコミュニケーション、医療提供の在り方などについて伺っていこうと思います。少人数で行いますので、気になる方はお早めにエントリーをどうぞ!

 

 

 この少人数と至近距離で、会田薫子氏や近森正昭氏のトークを聞ける機会は滅多にないのではないでしょうか…。主催者であることを置いておいても、かなり貴重なイベントだと感じています!

 

<イベント概要>

 

◆日時:9月21日(土)18時~ (2次会あり)

 

◆内容:新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」出版記念パーティー。

トークイベントゲスト:

会田薫子氏(東大大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座特任准教授)著書「延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学」ほか

近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部部長)

 

◆場所:東京・銀座界隈・・・エントリーくださった方に直接お知らせします。

 

◆定員:35人(先着順)

 

◆会費:10,000円(当日お渡しする書籍代込み)

 

◆お申し込みは、問い合わせページから、お名前とご所属、メールアドレス、通信欄に「出版記念パーティー参加希望」とご記入の上、お申し込みください(会員の方はお名前のみで結構です)。お問い合わせもフォームからどうぞ。

 

◆新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」の概要はこちら

 

◆主催:NPO法人パブリックプレス

 

10月以降に関西で、また違った形の出版記念イベントを行う予定です。こちらも、詳細が決まりましたらお知らせいたします。

 

ご参加くださる皆様にお会いできることを、心待ちにしております!

 

 

2013年

8月

29日

新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」来月発売!!

 新著「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」(ロハスメディア社)が来月末に発売されることになりました! テーマは高齢者の延命医療です。一時期バッシング報道も増えた「胃ろう」ですが、そもそもなぜ胃ろうが大きく取りざたされたのか。背景にあるのは医療界の構造問題でした。私は取材を進める中で、胃ろうは社会的入院と同じ構造問題を持つことに気付きました。高度に発達した医療技術と、少子高齢化の進む現代の日本社会が重なったところに、問題は生まれます。現代社会の抱える問題の在り様を、患者家族、医療者、介護者、研究者へのインタビューで明らかにしていきます。

 

 お腹の上から胃に向かって穴を開けて栄養剤を注入する「胃ろう」が近年注目されました。胃ろうは飲み込む機能の低下した人が効率よく栄養を摂取するための手段。その栄養療法が本人の生活の質を向上させるべく適切に行われているかどうかが大切です。しかし、胃ろうが望まない延命医療になっているという偏ったバッシング報道も多く、「胃ろう自体が良くない」という間違った理解も一部で生まれているようです。「胃ろうは嫌だけど経鼻経管(鼻からチューブを通して栄養を注入する方法)」と言う患者がいたり、胃ろうのイメージが悪くなったために造設を断る医療機関が出てきたりもしているようです。胃ろうは、患者の状態に合わせて使えば、とても有効な栄養摂取の手段なのに、これでは意味がありません。

 

 

 問題は、なぜ「延命医療になっている」と言われるような、適切でない胃ろうが増えたのか、という背景の方でしょう。その構造を解き明かさないまま胃ろうそのものをバッ シングしても、問題の本質が伝わりません。誤解を生むだけです。一時期、「救急たらいまわし」などと言われ、救急医療機関の受け入れ不能が大きく報道されましたが、その時に医療機関をバッシングしても何の意味もなかったどころか、身を粉にして働く医療者のやる気を萎えさせてしまい、医療者と市民の対立が生 まれました。そうではなく、なぜその問題が起きているかに目を向けて、問題の本質を見ることです。医療にまつわる「ヒト・モノ・カネ」がどうなっているのか。多くはこれで解き明かせると思いますが、医療制度や医療費の仕組みは複雑で分かりにくいです。マスメディアのキャパシティではそこまで報じるのは難しいでしょう。そしてこういう問題には、概して悪者はいません。それぞれなんらかの理由があって、それぞれの行動をしています。悪者のいない話は分かりにくいので、やはりマスメディアには向きません。

 

 新著では、患者さんの家族や様々な立場の医療者、介護者、研究者へのインタビューを基に、「なぜ胃ろうが望まない延命になっているのか」を解きほぐしています。

 

 前作「救児の人々~医療にどこまで求めますか」をお読みくださった方々は、全く同じ問題構造があることに気付かれると思います。少子高齢化の進む日本の現代社会と、高度に発達した医学や医療技術。私たちはその医療技術の恩恵を受けて暮らしています。一方で、その医療に翻弄され、福祉サービスの貧困など予想もしなかった負担に疲れ果てている家族もいます。そして医療費は、私たちの税金と保険料から成ります。医療費や医療者が無尽蔵なら、助かる命はどんどん助かってほしいと思いますが、財政難の日本という全体のバランスの中で見た時にどうなのか。医療だけでなく、その後の福祉や教育、社会環境はどうなのか。またその医療を受ける患者個人の幸福に合った適切な医療になっているのか。たくさんの論点があると思います。「救児の人々」の新生児医療、今回の高齢者医療、そして他の分野、また違う業界でも似た構造があると感じています。

 

 家族や医療者、介護者、研究者の言葉は深いです。彼らの言葉の中に、考えるヒントがたくさんあります。

 

 少しだけ、プロローグを紹介します。

 

    ◆         ◆         ◆         ◆

 

「胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」プロローグ

「お義母さん、来たよ」
 返事はない。6畳よりやや狭い個室の奥のベッドに、手足を亀のように縮めた老女が寝ていた。部屋の中には、衣類の整理ダンスが一つあり、ベッドサイドに引き出しの付いたテーブルがあるだけ。生活感がまるでない。
 大阪府の郊外にある有料老人ホーム。3年前にできたばかりで、まだ綺麗だ。
 老女は、アルツハイマー型認知症で寝たきりの要介護5。何度か脳梗塞も起こしており、四肢関節の拘縮が強い。話しかけても若干の反応がある程度。
 施設のお誕生日会の時や七夕行事の時に撮られたのだろう写真が整理ダンスの上に飾られているが、写真の中の老女の目はカメラに向いていない。隣に古い写真が立てかけられていて、その中で着物を着て腰かける若い女性が寝ている老女であることは、顔の骨格と目の周りの様子から分かった。隣に立つ凛々しい顔立ちの男性は夫だろうか。2人とも意志の強そうな表情が印象的だった。
 しばらくすると、看護師がビニールパックやチューブなどを手に部屋に入って来た。
「秋元さん、失礼しますね。お食事の準備しますので」と老女に近づき、ベッドの背を起こした。
 プラスチックのボトルの先にチューブを繋ぎ、ビニールパックを開けて流動食を入れ、チューブを調整してから老女のパジャマの裾を上げる。老女のお腹には、プラスチックのボタンのようなものがついており、看護師はチューブをボタンの上の部分に差し込む。胃ろうだ。間もなくボトルの中の栄養剤がゆっくりとチューブを通ってボタンの部分を通過し、胃に入り込む。
「はい、ではまた後で来ます」と言うと、看護師は足早に部屋を出た。秋元清美さん(仮名、58歳)は、老女の顔を覗き込み苦笑いしてつぶやいた。
「お義母さんの、お食事」
 老女は、うっすら目を開けたまま、宙を見つめていた。

◆介護が楽だと言われて

 大阪府に住む秋元さんは、義母の政子さん(88)の暮らす有料老人ホームに、ほぼ1日おきに通っている。
 政子さんを自宅で4年間介護し、心身ともに疲れ果て鬱病になってしまった。夫とも不仲になった。空いていた有料老人ホームは思った以上に高額の入居費用が必要だったが、在宅介護を続けるのは困難と判断し、ローンを組んで入居させたのだという。政子さんが入居してから1年間、清美さんはほぼ1日おきに施設に通い、自らも精神科病院への通院を続けている。
「最初に説明を聞いた時に、胃ろうの方が介護は楽やと言われました。夫が家に帰ってもらいたがってたんで、それやったらなるべく手間のかからん方が、私たちも介護が続くと思いました」と、秋元さんは政子さんに胃ろうを着けた時のことを話した。「とっさにお義姉さんたちの顔も浮かんで、『何しとったんや』とものすごい責められるんちゃうか、とか。私は嫁やからね、お義姉さんたちに『お母さんを見殺しにして』とか言われるのだけはほんま勘弁、というのもありますよね。普段介護してるのは私でも、そういう時だけ、あの人ら出てきて」
秋元さんは、ぽつりぽつりと話し続ける。
「主人なんか、仕事を理由にして全然お義母さんに会いに来ようともしない。全部私にだけ押し付けて……。もしかしたら、あのお母さんのあの姿を、見たくないのかもしれませんよね。お母さんのことが大好きで、マザコンみたいな人やったのに、だからなおさら見たくないんかなあ……。あの時(胃ろうを着けなければ生きられないという説明を受けた時)、『そんなん絶対あかん!』って顔真っ赤で、ものすごい剣幕やったんですよ。でも、だからこそ、自分たちで選んだことが違ってたかもしれないなんて、思いたくないのかも……」
 2時間ほどで政子さんの栄養剤の注入が終わると、また看護師が来て、手際よく片付けて行った。注入が始まっても終わっても、政子さんの表情に変化はない。秋元さんも特に部屋で何をするわけでもない。普段は、読書や雑誌のパズルをして過ごしているという。他の入居者は部屋を出て団らんしたりもしていたが、もちろんそこに政子さんは加わらない。スタッフが車いすに政子さんを載せて部屋から出たとしても、スタッフには別の仕事があるので、一人で車いすに乗って窓に向かわせられていることが多いそうだ。
 しばらくしてから秋元さんは、帰途についた。秋元さん自身は、昼食をほとんど取らないらしい。「音もせんとぽたぽた落ちる流動食を見ていたら、自分の胸まで膨れた感じ」になるという。
 帰宅してから夫の食事を用意する。息子が東京で働いていて、月に1度ほど秋元さんの方から携帯電話に連絡するが、忙しいのかすぐに切られてしまう。政子さんのことが話題になることは、ほとんどないという。
 施設から駅までの道で秋元さんは言った。
「家で介護することがなくなってから、余計に落ち込むことが増えたような気もするんですわ。寂しいとか、思う時間も増えましたから。熊田さん、お義母さん見て、どない思われました? ちっとも幸せに見えへんでしょ、正直……。幸せなんやって思い込もうとした時期もありましたけどね、だってそうでも思わんと耐えられへんからねえ。でもそれも、なんかもうほんま疲れて。なんでこうなったんかな……。私らが、悪かったんでしょうか?」

 

 

 

◆         ◆         ◆         ◆

 

 

 

そもそも、タイトルにある「シュークリームってなんだ?」と思われている方もいると思いますが、読んで頂けると分かります!

 

ぜひ、お手に取って読んでいただけると嬉しいです!!

 

胃ろうとシュークリーム~本当に大事なのは何ですか?」Amazon紹介ページ

2013年

8月

05日

FMラジオ「月も笑う夜に」に生出演しました

スタジオで
スタジオで

 7月29日夜、FM79.2ラジオ番組「月も笑う夜に~虹色トークライブ」に生出演しました。約30分間、トークゲストとして話させて頂き、私が医療記者を目指したきっかけ、在宅医療や救急医療などのお話をさせて頂きました。この番組はUstreamで動画中継されるので、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる環境があればどこからでも視聴できるというのが面白かったです。

 

 最初は、私が記者になったきっかけを話しました。よく、「なんでそんなに一生懸命この仕事をするの?」と聞かれるので、少しご紹介したいと思います。

 

 以前、ロハス・メディカルのブログにも書きましたが、私がメディアを目指したのは、大切な親友の死がきっかけでした。私が学生だった15年ぐらい前の話です。私の親友は、HIVに感染していました。当時、まだHIV/AIDSは「死ぬ病気」というイメージが強く、セクシュアルマイノリティがかかる病気だという偏見もありました(今は薬が改良され、正しく服用し続ければ、罹患していても寿命をまっとうできる病気になっています)。孤独だった彼女は、耐えきれなかったのかもしれません。自ら命を絶ちました。

 当時の私は、彼女の死という事実を認められず、耐え切れなくて、医療、福祉、行政、社会、自分自身を責め続けていました。やり場のない怒りと悲しみを、あちこちにぶつけ、酷い有様だったと思います。けれどある時、「責めていても変わらない、じゃあ自分には何ができる?」と思った瞬間に、世界が変わったのです。私はHIV/AIDSキャリアをサポートするNGOに関わるようになったり、色々行動し始めました。そこでメディアの重要性に気付き、記者を目指したのです。そして、福祉業界の専門誌の記者になりました。

 

 それからの私は、医療福祉現場を知るために記者をやめて国家試験を受けて病院や有料老人ホームで働いたり、また記者に戻ったりと紆余曲折してきました。でも一貫しているのは、「必要な情報を、必要な人に届けたい」「分かりにくい医療・福祉を、分かりやすく伝えたい」ということです。誰かや何かに振り回されることなく、それぞれの人が自分の人生の主人公として生きられる社会をつくりたいと思って活動しています。

 

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2013年

8月

04日

昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました

ご縁あって、昭和大医学部救急医学講座の客員講師になりました!

 

今後は、医学生さんや医局の方々に「ジャーナリストの視点から見た医療」についてお話しさせて頂き、医療者と一般市民の間の感覚のギャップを埋めるお手伝いをできたらと思っています。

 

これまでも医学生の勉強会で話させてもらったことがちらほらありましたが、「足首の捻挫にテーピングしたら5000円」など、診療報酬や医療制度、保険料の話をすると、非常にもの珍しそうに聞いておられたことを思い出します。「医学部の講義では社会的な話が全然ないので、自分たちがどんな風に見られたり、どんなふうにお金が動いているのかを知ると面白い」などといった感想もありました。マスメディアの行動原理、医療事故、訴訟、医療行政など、医療者にとって「へー」になる、普段聞けない話を提供したいと考えています。

 

 

 

7月29日は、昭和大救命センターの皆様に御挨拶をさせていただきました
 
医師、看護師、薬剤師など25人ぐらいいらしたでしょうか。普通は医学部の講師と言えば多くは医師、医療職です。まさか一般人の、しかも医療ジャーナリストが来るとはどなたも思っておられなかったようで、私も大変緊張しました。
 
でも皆さんお優しくて良い方ばかりで、色々話してくださったり、今後についても一緒に考えて下さったり。その暖かさに、緊張が緩みました。ありがとうございました!
 
昭和大病院長の有賀徹氏は「ジャーナリストがスタッフにいる救急の医局は日本のどこにもないと思うし、新しい取り組み。彼女にはより現場のことを知ってもらって、いい記事を書いてもらいたい。医療者は世間知らずになりがちなので、彼女の話から学んでいくと、社会性を持ったスタッフが育つのでは」と話してくださいました。ありがとうございます!
 
これからも、一層医療者と市民の懸け橋になれる仕事をしていきたいと思います。がんばるぞ~。
 
 
 

2013年

8月

04日

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。

 

午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。

 

今回のテーマは、在宅医療。

 

 

 

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。

 

なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。

 

講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。

 

しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。

 

厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。

 

なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。

 

しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。

 

その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。

 

しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。

 

最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。

 

 

そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。

 

 

終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

2013年

7月

17日

「がん治療きっかけで生保受給になる患者がいる」~有賀徹昭和大病院長・日病主催シンポ

有賀徹昭和大病院長
有賀徹昭和大病院長

 有賀徹氏(昭和大病院長)は17日、日本病院会主催のシンポジウムで「昭和大では入院患者からの相談はがんが半分以上。その中で、がん治療をきっかけに生活保護を受給し始める人が年間100人以上いる」と話しました。生活保護受給者の医療の話はよく出ますが、入院をきっかけに生活費に困窮して生活保護受給者になる人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。興味深かったので、ディスカッションの内容を紹介します。

 

  「急病と社会のしくみ」と題したシンポジウムでは、有賀氏のほかに前原和平(白河厚生総合病院長)、矢野久子(東京都品川区保健所長)、阿真京子(「知ろう!小児医療!守ろう子ども達」の会代表)、藤井栄子(春日部市立病院看護師長)、佐野晴美(社会保険横浜中央病院医療ソーシャルワーカー)が登壇。国内の救急搬送の現状と問題点、民間の二次救急医療機関の減少、高齢者やがん患者の生活と医療などの話題が上がりました。

 

 ディスカッションで有賀氏は、がん治療にかかる費用負担が大きいために、入院中に生活保護を受給し始める患者がいること話しました。これを受けて藤井氏は、「年間に5人から10人ぐらい、治療をきっかけに生活保護になる人がいます」と発言。首都圏の有名がん治療拠点病院に入院していた患者が、治療費を払い続けることができなくなったと言って、転院の相談を受けることがあるとしました。「離婚になって治療費がが払えないとか、40代、50代の若い方がおられます。公立病院なので、他にないらご協力しましょう、ということでやっています」と話しました。

 

 シンポジウム終了後に話を聞くと、藤井氏は「治療がそんなに長期間になると予想できなかった人もいると思います」と話し、予想以上に治療期間と費用がかかったために支払い不能の状態に陥る人がいると実感を話しました。

 

 有賀氏は、がん治療にかかる費用は、入院と外来で金額が異なることを指摘。入院は治療や薬、ホテルコストが”まるめ”になる包括払い方式のため高額になり過ぎることはないけども、外来の場合は分子標的薬など高額な薬を使うと格段に高くなるとしました。さらに現在の化学療法は外来治療が主流になっているともしました。「元々月収が20万円とか30万円の人だとすると、例え高額療養費制度を使ったとしても毎月約8万円を支払い続けるのは難しい。元々年金などでギリギリの生活をしていた高齢者だと、制度の上限が低いとしても支払いが難しく、生活保護になる人が多い」と話しました。

 

 佐野氏は、「がんだけでなく、治療をきっかけに生活保護になる人は多いです。医療費だけでなく、最近はリースが多くなっている入院時の衣服やタオル代、オムツなど自費になる分を払えなくて生活保護になる人がいます。生活保護を受けられる人はまだよくて、収入がほんの1000円ぐらい受給の基準を上回るだけで生活保護を受けられず、制度のはざまに陥って生活に苦しんでいる人達が多くいます」と話しました。

 

■            ■             ■              ■
      

 すでに生活保護を受けている人が医療を受ける際の話はよく出ます(モラルの問題や、薬の転売などが多いですが・・・)。しかし、入院をきっかけにそれまでの生活ができなくなって生活保護の受給に至る人の話は、あまり聞かないのではないでしょうか。予想以上の治療期間となって医療費がかさんでしまったり、入院時の服のリースなど、思わぬところで負担が発生したり・・・。病気になって入院するだけでも生活が一変するのに、生活保護受給者になってしまうとは、さらに様々な負担が増すのではないでしょうか。精神面への影響も大きそうです。

 

 これはなかなか興味深い話題でした。実際はどうなっているのか、取材を深めてみたいと思いました。

 

 

 

2013年

7月

15日

月刊「文藝春秋」8月号に記事掲載

月刊誌「文藝春秋」8月号に、私の書いた記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。タイトルは「不妊治療大国」日本の悲劇。不妊の当事者や医師に話を聞いた、生の声をベースにした記事です。

 

最初は「なぜこんなに『卵子の老化』が騒がれているのか」という社会的な記事にする予定でしたが、紆余曲折あり、当事者の声を中心にしたものにすることになりました。

 

 

中には、男性不妊の当事者の声もあります。私も取材中に初めて知りましたが、WHOによると、不妊カップルの半分は男性に原因があるのです。

 

『卵子老化』が言われるようになり、不妊治療の助成に年齢制限が付くなど、少しずつ産む年齢についての意識は変わってくるのかもしれません。しかし、実際の社会は、産みにくく、育てにくい現状があります。かといって子どもを持たなければ、周りから責められる女性も多くいます。本当に、難しいなと思いました。

 

政府はずっと以前から少子化対策をしていますが、奏功していません。

 

そういう私も、妊娠・出産よりキャリアを優先してしまってきた一人です。他人事ではないと感じながら書いていたので、心が重くなった時期もありました…。

 

ぜひお手にとってご覧いただけますと、嬉しく思います。

2013年

7月

13日

救命士が臍帯結紮・切断研修~妊婦搬送に対応

東京消防庁のDMATデモンストレーション
学会当日に行われた東京消防庁のDMATデモンストレーション

 北海道北見地区の救急救命士は、分娩介助が必要な妊婦の搬送依頼に応えるため、臍帯の結紮と切断の研修を受けています。12,13両日に都内で開かれた臨床救急医学会学術集会で研修内容などが発表されました。素晴らしい取り組みである一方で、彼らは一体どこまで学ばなければならないんだろう、とも考えさせられました。

 

 北見地区消防組合消防本部の発表によると、北見市の2008年から5年間の救急件数は約13万6000件。「妊娠、分娩及び産褥」に関する要請は281件。このうち、現場や救急車内で分娩に至ったのは39件ありました。

 

<報告された救急車内での出産ケース>

28歳の経産婦が陣痛を訴えて救急要請。2階の居間で側臥位で陣痛を訴え興奮状態。「腹部全体が痛い」、「何か出たかもしれない」と訴える。性器部を観察するとこぶし大の胎胞が脱出。破水はない。陣痛2分おき。早期の出産になると判断した救急隊は、妊婦を搬送。妊婦が車内で「何か多量に出た」と、激痛を訴える。外性器から胎児の頭部が出ていた。救急隊が介助して出産。

 

 同消防本部は、産婦人科関連の搬送件数が年々増えていることから、産科救急に安全・迅速に対応する知識と技術の研修が必要と考えました。08年から日本赤十字北海道看護大の協力を得て、全ての救命士が研修を受けています。10年からは助産師の指導を受け、実際の臍帯の結紮と切断も学んでいます。

 

 研修後にアンケートを取ると、実際に臍帯の結紮・切断を行った人は1%。研修から1年経つと、知識は覚えているものの、現場活動に「不安がある」と答えた人は55%。研修の継続を望む人は97%とほとんどでした。

 

 

患者を除染、搬送するデモンストレーション
患者を除染、搬送するデモンストレーション

 そこまでの取り組みを行っているとは、すごいなと感心して聞いていました。一方で、彼らはどこまで知識や技術を習得していけばいいのだろう? とも。救急要請をした患者に一番最初に接するのは救急隊員、救急救命士です。それこそ妊婦もいれば、子ども、高齢者、精神疾患患者など、実に様々な患者に接 します。もちろん彼らの知識や技術が向上することは素晴らしいことですし、望まれることではありますが、キリがないんじゃないかなあとも思うのです。彼らが学んでいくには、教える人、時間が必要になり、お金もかかります。ボランティアで向上し続けろというのは、違和感があります。では税金を使うなら、国民 がどれぐらい負担するのかという話になります。一体どこまでの医療の質を求めていくか、やはり考えないといけないと思うのです。

 そもそも救急隊が行う基本的な手技の質が低下していると いう話もあります。これには、消防機関の意識や、救命士や救急隊の教育に熱心な救急医がいるか否かなど、かなり地域差があると言われます。まずはこうした質のバラつきを改善し、担保する制度の充実が必要ではないかと思います。処置範囲拡大の議論が進む陰で、地域格差が大きくなりそうな気がします。

 

 

 

 

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2013年

6月

29日

国内最大の既得権益とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground⑤

梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者
梅村聡参院議員(民主)(中央下)と参加者

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

 

参加者

みんな仕事や子育てで、余裕のない生活を送っています。当然政治のことなんて勉強する時間もありません。でも、政治家が国民を騙していることがいっぱいあると思います。騙されないために何をしたらいいと思いますか? この現状を、指をくわえて見ていたくないという気持ちがあります。

 

■国会予算委員会の傍聴がオススメ

梅村さん 

僕はより身近に感じてもらうため、「国会に行こう」ということを提案します。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、僕の事務所に連絡してもらったら案内できます、というぐらいの話なんです。でも、知らないから、誰かの紹介がないといけないのかとか、一生に一回行けるか行かないかという話になっていたりします。「お 茶席」のようなもので、一回行って、お抹茶飲んでお饅頭を食べて、礼儀や作法はそれからでいいんです。僕の部屋に来てお茶をしたことのある人は、メールで も普通の雑談程度の事も送ってこられるようになります。そのメールには意味がないかもしれないけど、でも僕は読みます。政治家と市民の自然な交流が起こり ます。毎月来ている方もおられます。今日、この場でいくら話していても、やっぱりまだ遠いと思うんです。一度来てもらったら庭みたいになると思いますよ。

 

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2013年

6月

22日

政治献金、どう考える?~市民と政治家の対話集会Common Ground④

↑会の動画アップされました。

■梅村さん・樋口さんの自己紹介 ■96条をはじめとした憲法“改正”についての対話」

 

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■陳情の扱い方

参加者
政治家というだけで、変な輩が寄ってきたりすることはないですか? この人ちょっと困るなとか、無理難題を浴びせられて困るとか。

梅村さん
その辺の裁き方は、僕らはプロです。そういう人もいますよ。「どこかの公務員試験で点数を上増ししてくれ」、なんてことが平気であります。もちろんそんな話は聞きません。そんなことを言う人の話を聞いたら重荷だし、やったという事実を引きずらないといけません。昔はそういうこともやっていたみたいですけどね。

参加者
僕(公務員)も職業柄、いろんな噂を聞きます。

梅村さん
昔は「大学の裏口入学やります」と、平気で議員会館に貼られていたという話も聞きます。だけど今は、インターネット上でいろんな話が流れる時代ですから、そんなことしていたらリスクです。陳情には、明らかに犯罪であるもの、口利き、社会のためのもの、などがあります。何の話を採用するかが腕の見せ所なわけです。逆に言うと、最近の政治家はクリーンになり過ぎていて、頼まれても「一肌脱いだろか」という人も少ない。私は医療者や介護従事者が困っているという話を聞き、国会の質問に取り入れました。結果として、厚労省が通知を出すことで改善されています。そういう情熱のある政治家が少なくなっています。「一部の人の話を取り上げるのはフェアじゃない」と言って断る人が多いですが、一部の話から、一般に通じる話を導き出し、解決していく。そういうことも大事なんじゃないかなと思います。

 

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2013年

6月

16日

憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?~市民と政治家の対話集会Common Ground③

①政治は「携帯電話」

②「業界の利権が憲法草案内に」

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■”3分の2”、もう一つの罠

 

梅村さん
一つ面白い話をしてもいいですか? 憲法学者の中で話題になっているんですが、憲法改正が3分の2から2分の1できるようになったとするでしょう? そこで、改正したい条文をがーっと全部通すんです。次にまた2分の1を3分の2に戻すのは、2分の1の賛成でできるわけです。それで3分の2にして、(改正した憲法を元に戻されないように)ロックをかけるんです。それができてしまう。そのことを、憲法学者は真剣に心配しています。

 

参加者
僕はそのリスクを心配しています。国民投票の得票率が90%超えてかつ2分の1というのだと納得できるんですね。でも今、国民の投票率が低いじゃないですか。ストレートに言いますが、国民の政治への関心度合いが低いところを利用して好き勝手してないかというのが感想です。真剣に政治を考えてる市民はいるわけなんですが、そういう人の思いを無視して、2分の1に持って行かれると困るなと。国民の政治への関心の低さを利用している、そこが問題かなと。

梅村さん
お年寄りと言われる人が、よくなんでもかんでも教育が悪いという話にしますその理由は憲法だと。それで「憲法変えなかったら日本は沈没する」とかそんな話になっています。風が吹けば桶屋が儲かる的なことを言う高齢者の議員さんが多い。あれは無責任じゃないかと僕は思います。二言目には「教育が悪い」と言います。

参加者
やたらと日教組を恐れているんです。日教組なんて、弱いのに。

梅村さん
組織率二割しかないですのにね。

参加者
なんであんなに日教組が怖いのか、と思います。

梅村さん
なんでもかんでも教育と言うが、それならあなたたちの世代の教育はちゃんとやってきたんですかと。そういうことは棚上げにして、何か言うと「占領下で作られた憲法がああだから教育がうまくいっていない」と言います。挙句の果てに、「最近のお医者さんが命に関わる仕事を避ける。それは教育が悪いから」なんで悪いかというと、「あの憲法が悪い」と言うんです。本当ですよ。

参加者
「教育が悪い」と言うことで思考停止するんですよね。

梅村さん
そう、「教育」と言ったらみんなの思考がぴたーっと止まる。そういうことがあります。

参加者
80代半ば以上のあの戦争を戦地や空襲で知っているお年寄りは、戦争の現場を知らん若い奴が、何を勇ましいこと言うとんねん、と言っていますね。

樋口さん
男性の意見と女性の意見があると思っています。この前「永遠のゼロ」を読んだんですけど、本当に二度と戦争を起こしてはならないと深く決意をし、そのために議員にならせてもらったんだと決意をしました。どんなことがあっても戦争には命かけて断固反対だと私は思いますから、そのためにできることをやりたいと思いました。
(時間の都合により、樋口さん退室)

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2013年

6月

15日

【備忘録】近森正昭氏の全医連イベントでのコメント

 全国医師連盟が6月8日に開いたシンポジウム「医療現場はどのように変わるべきなのか?~医師の診療環境改善へのアプローチ」、ディスカッション中の近森正昭氏(近森病院透析外来・臨床工学部長)のコメント。

 「医療というのは前近代的な経営がずっと行われてきた。いろんな無理、無駄、ムラがある。それをどうやってよくしていきますか、と。少子高齢化で、人口が減って医療費が上がりますよ、その中で無理、無駄、ムラをなくしていきましょう、と考えないとしょうがなくなってきた。そしたら政府や大企業は財源負担が大変だという言い方をします。だけどそれは生産性を上げていって、みんなが働きやすくなったら自動的に解決すること。私たちは生産性を向上させることを、「医療の質を上げることと、コストを下げること」だと考えればいいのであって。コストのことばっかり言ってる人たちがいたとしても、私たちは「コストを下げながら医療の質を上げましょう」という、そういう主張をしていけばいいだけ。そのために規制緩和なくしましょう、国民に対する教育が必要なんですよ、と言っていくということだと思います」

 

2013年

6月

14日

病院頼らず、診療所同士の連携を~神奈川・横須賀市内の開業医ら

 「診られないと思った患者を病院に紹介するのでなく、診療所で紹介し合うネットワークを作ろう」。診療所同士の連携を深めるため、13日、神奈川県横須賀市内の開業医やコメディカルが集まりました。呼びかけ人の中島茂医師(中島内科クリニック院長)は「診療所は何かあったら病院に紹介するが、他の診療所で十分診られる患者さんもいます。患者が病院に集中することも防げるので、病院の疲弊も防げます」と話しました。

 「診療所同士がお互いを知らないから、紹介できないのです。だから、まずお互いを知り合う場を持つため、会を始めました。こういうことをやっているところはあまりないと思います」と中島医師。

 

 なるほどなあ、と思いました。専門的な治療や、特別な検査機器などを要する患者が受診した場合、大体の診療所は病院に紹介します。しかし、中には別の診療所で十分対応な患者もいます。診療所同士がお互いを知っていれば紹介できるのに、そうでないため、できないということなのです。

 

 患者としても、診療所に紹介される方が、遠くまで行かなくてすむ場合もありますし、待ち時間も病院ほど負担になりません。病院に紹介されると、予約がいっぱいですぐに診てもらえないこともあります。

 

 病院側も、対応可能な患者は診療所に診てもらった方が、専門的な医療を行う外来や、病棟に集中できます。患者の集中を緩和すれば、ゆっくり診療できます。

 

 

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 この日は、中島クリニックの近隣の開業医とコメディカル32人が集まりました。中には歯科医や獣医も。専門領域などを自己紹介し、症例検討や、普段の診療における悩みなどを共有。精神面のフォローの必要な糖尿病患者のケースについて精神科医が意見する場面もあり、中島医師は「内科と精神科の医師の考え方は違います。普段ない交流になりました。ここはよくある勉強会とは違う会にしたいのです」と話します。

 

 あれ、医師会はもともとそういう場じゃなかったんだっけ? と思いましたが、中島医師によると、医師会は「交流」というよりも、年齢層の高い医師の話を若手医師が黙って聞いている雰囲気とのこと。お互いの専門などを知り合う機会にはなっていないということでした。

 

 ”医療崩壊”が叫ばれるようになり、病院への患者集中、勤務医の過重労働などが話題になりました。「なんでも病院に送る」という考え方を改めて、可能な患者は診療所で診る、というのは一つの方向性かもしれません。

 

 中島医師は、今後1,2か月に一度会を開き、趣旨に賛同する医師らに呼びけかけていくと話しています。

 

2013年

6月

08日

「業界の利権が憲法草案内に」~市民と政治家の対話集会Common Ground②

樋口尚也議員(左)、梅村聡議員(その右)
樋口尚也衆院議員(左)、梅村聡参院議員(その右)

①政治は「携帯電話」

③憲法改正”3分の2”見落とされた罠とは?

④政治献金、どう考える?

⑤国内最大の既得権益とは?

 

■自民党の憲法改正案、周辺の問題は?

司会

では、早速議論に入っていきたいと思いますが、テーマは、今騒がれている自民党の提案した「憲法改正」についてです。参加者の皆さんには、「憲法改正」について思うことを紙に書いていただきました。それを上げてください。「憲法96条改正のリスク、およびその回避策」、前文に関すること、などなど、色々ありますね。どうしよう、では梅村先生、この中から一つ選んでお話しして頂いてもよろしいでしょうか?

 

■軟性、硬性の議論なく96条改正はおかしい

梅村さん

先に、96条含めて、2,3分考え方だけお話しさせてもらってもいいでしょうか。

まず96条について僕の立場を申し上げます。憲法改正について国民投票にかかる前に、国会の3分の2の賛成がなければ、改憲案を出せません。それを2分の1にしていこうかというのが争点になりそうだと言っています。どうも争点にしないという話も、この2,3日ありますが。僕は、この3分の2を2分の1にすることについて、明確に反対です。内容を言い出したら色々ありますが、世界の憲法には、「軟性憲法」「硬性憲法」があります。それぞれの国がどっちをとるかを決めています。外 国では何回も変えているところがあります。でもそういう国の憲法をよく見ると、日本では法律に書かれているような内容が、憲法に書かれている国もあるんで す。公務員法とか内閣法とか国会法とか、そういう憲法ならできるだけ変えるハードルを下げておかないと、国を変えようとしたときに変えられないですよね。 だから「軟性憲法」をとっている国もあります。日本はそういうものは法律になっているので、憲法の条文はあれぐらいでおさまっているわけです。だから3分の2を設定しているんです。だからそこだけを取り出して、3分の2か2分の1かというのは、その国が憲法をどういう位置づけにしているかということを決めずにしているわけなので、僕は明確に反対です。

じゃ あ憲法に指一本触れてはいけないのかということについては僕はそれも違うと思います。必要な部分というのはあると思います。70年経って、変えるべきとこ ろは、3分の2の同意を取って改正すべきじゃないかと思います。どこを改正するかという話は長くなるので置いておいて、まずそういう立場だということをお 伝えしたいと思います。

 

■憲法は国民が為政者を縛る唯一のもの

樋口さん
梅村先生がおっしゃったことと、全く同じです。憲法96条の改正は公明党は慎重だという立場をとっていますが、僕は反対しています。その理由は二つ。一つは硬性憲法ということ、憲法は唯一国民の皆様が政治家を縛る法律なんです。 他の法律は、例えばこれに違反したらこんな罰則がありますよ、とか、権力者側が国民の皆様を縛る法律です。でも、憲法は、皆さんが国の権力者に「これは守 らなければいけないよ」と言って頂いているのが日本国憲法で、法律の中の法律です。だから絶対に変えることには反対です。リンカーン大統領が150年前に 奴隷解放をして、3分の2を超えて通しました。リンカーンは一人ひとりの反対議員の良心に問い続けて、奴隷解放を成し遂げたわけです。でもリンカーンはそ の後に暗殺されました。命を懸けて憲法改正をしなければいけないと、私は映画を見て実感しました。だから簡単に軽々に96条だけを先行し、中身の何を変えるかを言わないということについては反対します。世論もついてきたと思っていますし、だから自民党さんも私たちが明確に反対と申し上げているので、参議院選挙の争点にはしないという報道も一昨日にありました。

 

参加者

自民党の憲法改正案がネットなどでは簡単に見れますが、それについて自分としては、権力側を縛る憲法から国民の義務を課しているようなものに見えて、基本的人権の制限をしているように見えて僕は自民党の改正案には絶対反対です。お二人に、自民党側の改正案はどのようなものかをお聞かせいただけたらありがたいです。

 

■業界の利権が草案に盛り込まれている
梅村さん
改正案の中には色々あるので、一つの問題提起としてですが。僕は議員に当選した直後に舛添要一さんの本を読みました。彼は元々自民党の議員さんで、憲法草案を作る時の事務局長をされていました。本には憲法の草案をつくる時に、いろんな族議員がやってくると書いてありました。色々なことを業界のために変えてほしい、というわけですね。そこまで書いてないけど、例えば高速道路をつくることは国の責務だと書いたら、その業界から褒められるわけです。憲法草案を作る時にもそういう話があちこちから出てきます。教育はどこの責務か、国の責務だと言ったら国が予算を付けないと憲法違反だとなる。それが見えないような形で、あの草案の中にはビルトインされているんですよ。あれをよく読んでいただいたら分かります。防衛は国民の責務だと、するとそれを喜ぶ業界があるんです。それで予算を優先的に付けないといけなくなるから。だから一条一条見たらいろんなことが書いてあるけど、あの草案自体に、いろんなそういうものが出てきている。だから僕があの草案はあまり好きじゃないなあというのはそういうところなんです。

それともう一点は今仰ったように、憲法は為政者に対して国民が獲得するものです。それが国民の義務を課すものが多過ぎる。これはノスタルジーみたいなもので、国民側の権利を確保するという形になっていないので、政党が違うから言っているのではなく、多分憲法改正の時に党議拘束が外れると思うんです。党議拘束というのは何党だからこうしようじゃなくて、「あなたどう思いますか」と聞かれるということです編注:議案の賛否について、政党や会派の決議が議員を拘束する原則のこと。信条、思想に関わるものは外れる場合も。そういうことから言ったら、僕は同じような感覚であの草案を見ています。ちょっと総花的話ですが。

 

■憲法3原則に手入れされている

樋口さん

私からは2点あります。私は42歳、梅村先生は38歳。石原慎太郎先生などは「日本国憲法が日本をだめにした」など言われるのですが、私たちの世代は全然そんな風に思わないんですね。戦後の皆さんのおかげで素晴らしい日本を作って頂いて、その上で生活や仕事をさせていただいて、この日本に生まれて幸せです。この日本国憲法の下で日本は素晴らしい発展を遂げてきたと思っているし、世界に冠たる平和憲法だと思っています。
二つ目は、その素晴らしい憲法を改正することについて、「加憲」について公明党は積極的です、地方自治、環境権、自衛隊、など様々な問題については書き加えないといけないと思っています。でも基本的人権とか国民主権、恒久平和主義という憲法三原則は、国民の皆様がお選びになって、為政者に対して課している3つの原則。これをいじることはあってはならないと思っています。だけど自民党さんの案の中にはいじっていると思うところがあります。だから私たちはそこはブレーキを踏む役目だと思っているので、強くブレーキを踏んで、日本のこの素晴らしい平和憲法を曲げる必要はないと思っています。自衛隊を、9条2項に書くか、3項に書くかという問題はあると思います。

 

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2013年

5月

31日

政治は「携帯電話」~市民と政治家の対話集会Common Ground①

参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)
参加する市民と樋口議員(左)、梅村議員(その右)

「せっかくだから、政治家を呼んで色々話してみようよ!」「いいね!」――。

友人との会話から、市民と政治家の対話集会「Common Ground~同じ立場・目線で語ろう」が実現し、5月26日午後、大阪市内で開かれました。京阪神地区に住む一般市民11人、梅村聡参院議員(民主)、樋口尚也衆院議員(公明)が参加。憲法改正や政治献金、市民と政治家の距離感などについて、ざっくばらんなトークが繰り広げらました。実に面白い内容でしたので、ぜひ皆さんと共有させて頂きたいと思い、内容を少しずつアップしていきます。

 

■アクション起こす市民、応える政治家の姿を知ってほしい

 この「Common Ground」は、友人と政治について語っている時に企画を思いつきました。お昼を食べながら、現状の政治について問題だと思うことを、「こうなったらいいのにね」と熱く議論していました。私は聞きながら、この話をここだけで終わらせてしまうのはもったいないと思いました。市民が政治に無関心だとよく言われますが、ここにこんなに真剣に日本の将来を考えている市民がいて、意見を出し合っているのです。その思いを政治家にも知ってもらいたいし、ぜひ彼らの話も聞いてみたいです。意見を交換できる会をやってみたらどうだろう、と友人に提案すると、「面白そう! やろう!」との返事。私はその場で、携帯電話から梅村さんにメールを打ちました。

 

 梅村さんにはそれまでの取材活動の中でお世話になっていましたし、「少人数でも呼ばれたら、政治家は喜んで出かけます」と言って(参考…良い国会議員を選ぶ方法「ロハス・メディカル、梅村聡の目」)、国内各地で市民集会をやっていることを知っていたので、応えてもらえるかもしれないと思ったのです。すると「喜んでOKです」と即お返事を頂きました。早速友人に伝え、企画が始まりました。

 

 この集会は、一般的な政治家の演説会のような一方的に話を聞く形ではなく、同じ人間同士、同じ立場と目線で語ることを大切にしようと話し合って決めました(だから「Common Ground」と友人がネーミング)。政治家も実際に市民と触れ合う機会は少なかったり、自分たちのことを知ってもらいたいと思っているはず、と。だから、対話することを大切にしたくて、定員も少数にしました。そして、市民が気軽にこういうアクションを起こすことができ、それに応えてくれる政治家がいるということも、多くの人に知ってもらいたかったのです。政治家を呼んだ集会などをしようと思ったら、色々手続きや交渉とかがあるのではと思われるかもしれないけど、気軽に誰にでもできるものだということを。こういうことは、気軽に、楽しく、継続的にできることがミソだと思います。政治に関わるって、実は気楽にできるのだということ。これって、すごく楽しいことだと、私は思うのです。 

 

■政治家は市民が育てる

 私たちは普段、「今の政治家はダメ」、「国が信じられない」など不満を言いますが、大体言って終わりです。なぜ不満ばかりで、言って終わりになっているかというと、相手を知らないからだと思うのです。なぜ政治家はこう言うのか、こんな行動をするのか。それを知ることができたら、具体的に自分たちがどう行動すれば、政治家により良い政策を考えてもらえるのか、政治家に市民の情報を伝えるのかを、知ることができます。つまり、政治家を育てることができるのです。本来、政治家を育てるのは市民です。政治家は、市民の代表なのだから、私たちが育てなければいけません。その義務を果たさないまま「政治家はダメだ」というのは無責任です。自分たちが政治家に関わろうとしないのなら、政治家が市民を知らないのは当たり前です。まずその意識から、変わる必要があると思っていました。その小さな一歩にこの会がなれば、と思いました。

 

■応えてくれる政治家と、残念な政治家

 梅村さんが来てくださることは決まりましたが、せっかくだから他の党の議員さんのお話も聞きたいなと思いました。党の考えの違いもありますが、政治家の個性の違いが感じられると面白いと思ったのです。また、元々この会は特定の政党・政治家を応援するものではなく、あくまで「政治家という職業の人」と対話して相手を知ること、政治家と市民との対話が目的です。しかしお一人だけだと、詳しい事情を知らない人は、夏の参院選を控えた時期の特定の政治家応援イベントと見るかもしれません。それは本意ではありませんし、何よりできるだけ多くの政治家の方と対話したいと思いました。

 

 そこで、樋口さんとのコネクションがあるメンバーがいたので、彼女に樋口さんにもぜひご参加を頂きたいとお願いしました。彼女も樋口さんと懇意であったわけではなかったのに、頑張って連絡を取ってくれて、ご参加いただけることになりました。すごい!! 私はもう一人、以前名刺交換をした大阪選挙区選出で政治家一族の衆院議員にもお願いしてみたのですが、返事はナシ。野党時代はあんなに腰の低い感じでいらしたのに・・・とがっかりしました。そんな小規模の要望には答える必要もないということでしょうか。せめて一言、断りの連絡ぐらいほしかったです。それにしても、何が国民目線ですか、言ってることとやってることが違うじゃないですか、と思いました。私が今後しばらくの間、自民党に投票しないことは決定です。

 

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 さて当日、午後3時半にスタート。小さな会議スペースに、11人の一般参加者と梅村さん、樋口さんが集まりました。

 

 一般参加者の顔触れは以下。

30代男性(ベンチャー企業勤務、大阪府)、40代男性(公務員、兵庫県)、20代女性(医学生、兵庫県)、30代女性(看護師、京都府)、50代男性(薬局経営・薬剤師、兵庫県)、20代女性(アパレル勤務、大阪府)、20代女性(学生、大阪府)、30代女性(ケアマネジャー、兵庫県)、40代女性(薬局グループ企業勤務、大阪府)、50代男性(企業経営、大阪府)、私。

 

 最初に自己紹介。一般参加者からは、「普段政治に関心がなく、今日をきっかけに考えたい」「政治のことをこれまで全然考えてこなかった」などの話がちらほらとありました。

 

 次に梅村さんと樋口さんの自己紹介。

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